脂分取りすぎてませんか?脂肪分の多い食生活は、肥満や生活習慣病のリスクを高めることは周知されていますが、今回新しい研究で、さらなる悪影響が明らかになりました。中国で行われた新たな研究によると、脂肪分の多い食事が、腸内細菌に悪影響を及ぼす可能性があるのです。
研究では、200人の若くて健康な成人200人を対象に、低脂肪、中脂肪、高脂肪の食事を6ヶ月間摂り続けた際に見られる影響が調査されました。その結果、高脂肪の食事を摂り続けたグルーブでは、ある種の腸内細菌の数と細菌が生み出す物質に、「好ましくない変化」が見られることがわかりました。
そのような変化は、長期間続くことで「2型糖尿病といったメタボリックシンドロームのリスクを高める」といった、悪影響を引き起こす可能性があります。研究は、中国人民解放軍総医院と浙江大学によって行われ「Gut」誌で発表されています。
この発見は、伝統的な食生活を続ける国々の人たちよりも、中国のような食生活の「西洋化」が進む国々の人たちにとっては、特に無視できないものです。また、合衆国のような先進国で、高脂肪な食生活が普通になっている国でも関係がある可能性がありますが、それについては、さらなる研究が必要となるでしょう。
加えて、研究対象が若くて健康な成人で行われたため、そのほかの年齢層やグループの人たちにも当てはまるのかはわかりません。
腸内細菌と脂肪
先行研究では、食事が腸内細菌に影響を及ぼしうることがすでに示されており、ある種の腸内細菌が少なくなると、肥満になりやすくなることが分かっています。しかし、特定の食事をとった後に、腸内細菌がどう変化するかを調べた研究はあまりありません。
新たな研究では、参加者はランダムに3つのグループへ振り分けられました。低脂肪のグループは、カロリーに含まれる脂肪の割合が20%で炭水化物の割合が66%です。中脂肪のグループは、脂肪分30%、炭水化物56%。高脂肪のグループは、脂肪分40%、炭水化物46%です。
総カロリー量や、タンパク質、食物繊維などの量は全てのグループで違いはありません。参加者たちからは、試験前と試験終了後に、血液と排泄物のサンプルが回収されました。
6ヶ月の研究期間の後、低脂肪のグループでは善玉細菌として知られる、ブラウティア属(Blautia)やファーカリバクテリウム属(Faecalibacterium)の細菌が、試験前よりも増えていました。一方で、高脂肪のグループではブラウティア属やファーカリバクテリウム属の量は減っていました。これらの細菌は、酪酸塩と呼ばれる脂肪酸の生産を助けており、酪酸塩は腸細胞のエネルギー源として鍵となっていると同時に、抗炎症特性も持ち合わせています。
そこで、排泄物サンプルにおける、酪酸塩の量を調べた所、低脂肪グループでは試験後の酪酸塩の量が増えており、逆に高脂肪グループでは減っていました。
その上、研究の期間を通して、高脂肪グループでは2型糖尿病との関連している細菌である、バクテロイデス属(Bacteroides)や、アリスティピス属(Alistipes)が増加していました。
高脂肪グループの人達では、長鎖脂肪酸と呼ばれる体内での炎症を刺激すると考えられている物質も増えていました。実際、高脂肪グループの血液において、炎症を示すマーカーの値が高くなっていることも発見しています。
高脂肪の食事を長期間続けると、低脂肪の食事に比べて悪影響が現れることがわかりました。少なくとも、西洋化した食事に移行しつつある健康な中国の若者ではそうです。
また、研究後に全てのグループの参加者で、体重の減少が見られたのですが、最も減少していたのは低脂肪のグループでした。この体重減少が参加者に見られた腸内細菌や代謝マーカーの変化となんらかの関わりがあるのかはわかりません。今後の研究で解き明かしていく必要があるでしょう。
高脂肪の食事が体に悪そうというのは、誰もが薄々気づいていることです。今回の研究では、その影響が、脂肪分そのものだけによるのではなく、腸内細菌への悪影響を通じて引き起こされる可能性が示されました。もちろん、研究対象が中国の限られた年代層であるため、全ての人に当てはまるのかは示されていませんが、可能性はあるでしょう。いずれにしても、健康のためには高脂肪の食生活は避けた方がよさそうです。
参考記事: Live Science
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