お風呂に入ってしばらくすると、指がしわしわになりますが、どうしてでしょうか?以前紹介した記事では、はっきりと理由がわかっていないと説明しましたが、どうやら理由がわかったようです。
皮膚は素晴らしい器官であると同時に奇妙な器官でもあります。身体で最も大きな器官であり、多くの役割を担っていて、日光であふれる外界や、有害な化学物質、病原菌や厳しい寒さから、あなたを守っています。こういった役割を、体内の水分や、触覚を維持しながら行っています。
元記事の筆者は生物医学の技術者で、彼の率いる研究チームは、柔らかな生体組織の仕組みと機能のさらなる解明を目指しています。
皮膚のしわは、年をとったり、指でつまんだりしたときにできるものだというのは明らかです。しかし、長く水に浸かったり、プールで長い間過ごしたりしたときに、どうしてしわができたり、皮膚の色が変わったりするのかは、ちょっとした謎でした。
多くの人はこういったしわが、水を吸って、膨張とゆがみが起こった結果だと思い込んでいます。実を言うと私も長い間そう思っていました。
しかし、1930年代の発見で、指の神経に損傷がある人々では、水浴後のしわが形成されないことがわかっています。つまり、指のしわができるのは、水分を吸収したからというわけではありえないのです。そうでなければ、神経の働きの有無にかかわらず、一般的な現象としてしわができているはずなのです。
それでは、水膨れによらないのであれば、長時間の水泳後に手や足の指にしわができる原因はなんでしょう?最近になって、科学者たちはその答えと考えられるものを見つけました。
血管を収縮させる神経信号
何が起こっているのか、説明する前に、まず、無意識で働く自律神経系について少し知っておく必要があるでしょう。呼吸や瞬き、鼓動や明るい場所での瞳孔の収縮は、意識的なコントロールによらず起こるもので、自律神経系の働きによるものです。
自律神経系はまた、血管の拡張や収縮を自動的にコントロールしています。一般に、気温や薬剤、食べ物や飲み物が、血管の拡張や収縮を引き起こす可能性があります。暑い日に外出した時や運動時に、自発的に顔がほの赤くなったり、時には真っ赤になることを思い起こしてください。
この血管の収縮が、長時間の水泳後に皮膚にしわができる原因にもなっています。
手や足が2~3分以上水に接触していると、皮膚の汗腺が開いて、皮膚の組織に水が流れこむようになります。この余分な水分は、皮膚の内部の塩分濃度を低下させます。神経が、塩分レベルの低下の情報を脳に送ると、自律神経系が反応して、血管を収縮させるのです。
血管が細くなると、皮膚の全体の容積は減少し、皮膚が縮んでしわになることで、特徴的なしわしわができます。乾燥したブドウがしわしわのレーズンになるのと似ています。表面積よりも多くの容量が減少するのです。
血管の収縮によって、皮膚も青白くなります。これは、熱々の風呂に入った時に、血管が拡張することで、赤くなるのとはちょうど反対の現象です。色の変化は、皮膚の色が薄い人では、少しだけはっきりしています。
神経が損傷すると、この収縮は起こりません。血管が収縮するようなメッセージを受け取らないので、非常に長時間お風呂に浸かっていてもしわしわができることはないのです。
指や足指のしわしわの利点
では、濡れた時にしわしわになるのは何のためでしょうか?
ある研究では、しわしわの方が、ない方よりも、水中での把握力が高かったということがわかっています。把握力が高いと、物体を強く握ることができます。水中を歩きやすくし、滑りにくくします。これは、時間をかけて進化するにあたって、素晴らしい特徴だと思います。
塹壕足は、長い期間湿った環境で働いたときに起こる皮膚の損傷です。兵士や水田のような水浸しの畑で働く農業従事者で見られる傾向にあります。
水に浸された時間が長くなると、皮膚は損傷を受けやすくなりますが、この弱化には数週間もかかります。水泳用プールで長時間泳ぎすぎたくらいだと、しわしわの指はプールから上がってしまえば元にもどるでしょう。
参考記事:The Conversation
コメント