お風呂に浸かってしばらくしてから指を見るとシワシワができています。しかしこのシワシワ、「なぜ」できるのかは科学者たちでもよくわかってはいないのです。
わかっている事実を列挙すると
- シワシワができるのは、水に浸かってから5分以上経ってからで、水の温度が高いほうが早くできる。40度ほどのお湯であれば、3分半ほどで指にしわしわができる。
- ニホンザルなどのマカク属の猿の指もしわしわになる。
- しわができるのは手や足だけ。他の部分の皮膚はシワシワにならない。

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水を指先に乗せても勝手に吸収されていかないことを私達はよく知っています。しかし、実際には私達の体は皮膚の表層部の何層かに水を透過させる能力を持っているのです。その仕組は神経系と何らかの関わりをもっていることがわかっています。神経系は脳からの司令を体の各所へと伝えるネットワークシステムです。
実際、特定の神経が損傷したり切断されたりすると、濡れたときの手や足のシワシワができなくなります(ref.BMJ)。つまり神経からの司令でシワシワになるように調節されているようなのです。
また、手足のシワシワは、血管収縮とも何らかのつながりがあります。血管とは体に血液をめぐらせる細い管です。血管には動脈や静脈、毛細血管といった種類があります。
このように、「どのように」して指にしわしわができるのか、についてはわかっていることもあります。しかし、「なぜ」シワシワができるのかについてははっきりした答えは出ていません。
なぜシワシワができるのか、ほんとうの意味で理解されてはいませんが、説明するための「仮説」はいくつかあります。仮説とは科学者たちが思いついた、最も有り得そうな説明のことです。
すべりやすい環境ですべりにくくする

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指がしわしわなときに濡れた物をつかむとつかみやすかった経験はありませんか?
水中でのスベリ止めの力をシワシワの指が高めてくれるのではと考える科学者がいます。シワシワの指は濡れた物体を触ったり持ったりするのを楽にしてくれます。水中ではしわしわの足の指も、ぬれた地面を安全に歩く助けとなっているかもしれません。
大昔、小川や大きな川といった流れの早い場所で、私達の祖先が水中で食べ物を集める際の役に立った可能性があります。
しかし、ある科学者がこの仮説を検証したところ、シワシワの指が滑りやすい物体をつかむ役に立たないことも多いことがわかっています。なのでこの仮設は全く的外れかもしれません。
なぜ指はいつもシワシワじゃないのでしょう?
指や足の指がしわしわだと便利なことがあるとすれば、なぜいつもシワシワになってないのでしょうか。
シワシワがあると怪我をしやすくなったり、指先の感覚が鈍ったりするからかもしれません。いつも足がぬれていてシワシワだったとしたら、痛みを感じたり塹壕足と呼ばれる危険な状態になるかもしれません。塹壕足は足が青白く湿って腫れ、冷たくなるもので、ひどくなると足が壊死を起こすものです。
そんなこともあるので、手や足のシワシワがいつも出ているのは良いことだとは言えないのです。
なぜ、おふろに浸かっていると手の指や足の指がシワシワになるのか?という疑問はまだちゃんとした答えがありません。あなたが科学者になって、この質問の答えを見つけてみるのもいいかもしれませんね。
参考記事: The Conversation
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