何百万光年も離れた星の姿を見た時、何百万年も昔の姿しか見れないなら、どうやれば今の姿を見ることができるのでしょうか?
ここでの「今」の定義はどんなもので、私たちの「今」とその他の場所の「今」との関係とはどのようなものになるでしょう?
光の速度である、秒速30万kmよりも速いスピードで、移動できるものはありません。つまり、宇宙に存在する遠くの天体からの光が私たちに届くには時間がかかるのです。
天文学者は、宇宙の広大な距離を測るのに、光が一年間に進む距離である、光年という単位を使います。もし、天体望遠鏡で10光年、つまり95兆キロメートルの距離にある星を見るということは、観察している時よりも10年昔の星を見ているということになります。
10光年先のその星系に友好的な宇宙人が住んでいて、彼らに光でメッセージを送ったとすると、彼らがメッセージを受け取れるのは10年後ということになるでしょう。私たちがメッセージを送った「今」は、彼らの未来になるのです。しかし、彼らからメッセージを受ける時、私たちの「今」は彼らの過去になります。
このことは、遠くの星でたった今起こっていることを私たちが見る方法はないということを示唆しているように見えます。しかし、別の答えを有名な物理学者であるアルバート・アインシュタインの相対性理論に見ることが出来ます。この理論は物体とそれを取り巻く時空の関係を記述したものです。
時間を旅する
アインシュタインの理論は、ある奇妙なことを明らかにしました。あなたが地球を飛び出して、宇宙を光の速度にも近づくほどのものすごい速度で旅をすると、あなたが地球に残してきた人たちの時間よりも、ゆっくりとした速度で時間が進むことになります。
ここで想像してみてください。あなたは双子の妹を地球に残して、宇宙へと旅に出かけ、10光年進んで、10光年戻ってきます。あなたが旅をしている時、二人の時間は違ったふうに進みます。あなたの妹にとっては20年が過ぎています。しかし、あなたが光の速度へとあと1%までのスピードに達していれば、あなたの時間はたった3年しか進みません。地球に戻った時、あなたの妹はあなたよりも17年、歳をとっています。
もし、あなたの旅のスピードが光速まで0.1%まで近づけば、戻ってきた時には出て行った時よりほんの1ヶ月しか歳をとっていません。あなたの妹はほぼ20歳年上ということになります。
何か仕掛けがあるように思えますが、このことが正しいことを科学者たちは知っています。宇宙線と呼ばれるとても高速で動いている粒子が、地球の大気に含まれる原子にぶつかった時、不安定で崩壊するミューオンと呼ばれる粒子が生み出されます。こういったミューオンは地表には到達することが出来ないはずです。しかし、私たちはそれを観測しています。それは、ミューオンの時間が私たちの時間よりもゆっくり流れているため、地表に届くまで崩壊しないからです。
もし、光の速度で旅行できるなら、あなたの時間は全く進みません。あなたは瞬時にそこにいることになるので、あなたの「今」は遠くの星や銀河の「今」と全く同じということになります。他の人から見れば、彼らの時間の中をあなたが旅しているように見えるかもしれませんが、あなたは出発点から目的地まで同時に存在します。残念ながら、人間であれ宇宙船であれ、質量を持つ物体はすべて、光の速度で移動することはできません。
時間は固定されるものではありません。それは本当のところあなたやあなたが周囲の世界を見る方法にとって意味があるというだけです。そう考えると、時間というのは人生で最も大きな謎であるかもしれませんね。
参考記事: The Conversation
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