金縛りにかかる人がいるのはなぜ?

悪夢 わかる!科学

夜中に目覚めると体が動かないうえ、部屋に知らない人がいる!金縛りはそんな恐ろしい体験として語られますが、果たしてこれは心霊体験なのでしょうか?結論から言えば睡眠障害の一種ということになるのですが、医学的には「睡眠麻痺」と呼ばれています

睡眠は、明かりのスイッチを消すことに似ています。目覚めていても、スイッチが切られると眠りに落ちていきます。しかし時にはスイッチにガタがきていて眠りと目覚めの中間の位置で引っかかることがあります。そういったときに金縛りがおこり、目覚めているのに体が動かせないと感じるのです。

金縛りが起きやすい条件はいくつかあります。

  • 金縛りにかかりやすい家系である
  • 十分な睡眠がとれない、あるいはいつもと違った時間に眠った
  • ナイトシフトのある仕事をしている
  • 仰向けで寝る(仰向けで寝るとかかりやすくなることが経験的にわかっている)
  • ストレスがかかったり、ある種の薬を飲んでいる
  • ナルコレプシーといった睡眠障害を持っている(ナルコレプシーは昼間といった覚醒時に、急に抵抗できない眠りに落ちる病気)

金縛りに合いやすい時期というものもあり、主に十代の頃に最初に現れる傾向があるようです。また、性別によるかかりやすさというのはないようです。

ですが、科学者たちにもわからないことのほうが多いのが現状です。かかりやすい人がいる理由もわかっていません。

次に、現在わかっていることを説明します。

金縛り中は脳が半分寝ている

夢魔

Photo credit: edenpictures on Visualhunt / CC BY

昔、西洋では金縛りのことを「ナイトハグ」と呼んでいました。恐ろしい魔女や悪魔が胸の上に座っているような感じがすると伝えられています。幽霊などが信じられている地域では、金縛り時に幽霊の存在を感じたり見られたりしています。

現在では金縛りはごく普通の睡眠障害であることがわかっており、医師たちがパラソムニア(睡眠時随伴症)と呼ぶものに分類されています。脳が引き起こすしゃっくり程度のものと考えられているのです。幸いなことに、金縛りは普通長続きしません。

金縛りがおこったとき、脳のある部分は覚醒して活発になりますが、他の部分はぐっすり寝ています。寝ている部分は、筋肉に対して寝ているときに休息するように命令する部分です。そうすることによって夢に反応して動くことがなくなります。おそらくは、寝ているときに夢に反応して動くことで、自分や周りの人に害を及ぼさないために進化した機能でしょう。とはいえ、寝相が悪い人というのはいるのですが。

金縛り中は、それが睡眠麻痺と気づくまで、とても奇妙な感覚と恐怖を感じることもあります。

金縛りに治療は必要なし

眠りについたり目覚めたりする間に数秒から数分動けなくなったり喋れなくなったりしたとき、それは医師たちが「反復性孤発性睡眠麻痺」とよんでいる症状が出ているものと考えられます。

反復して金縛りに合うという方は、予防のために次の方法を試してみるといいかもしれません。

  • 十分な睡眠が取れているかを確認する
  • 生活の中でのストレスを減らす。(特に就寝前のストレスはさける)
  • 寝るときの姿勢を変える(特に仰向けはさける)

金縛りが頻繁に続き、夜の睡眠を妨げているとすれば、お医者さんに相談しましょう。金縛りの感じ方や病歴、家族に睡眠障害をもった人がいないかを尋ねられるでしょう。もっと詳しく調べるために、睡眠専門のお医者さんを紹介してくれるかもしれません。

日本では心霊体験に紐付けられて語られることの多い金縛りですが、幽霊を信じないアメリカでは宇宙人による誘拐と関連付けられて語られることが多いようです。幽霊やエイリアンは幻覚によるものですが、文化的な背景で見えるものが違うのは面白いです。人間であればだれでもしゃっくりを起こすように、睡眠麻痺が引き起こす金縛りも人類共通の体験であり、異常な生理現象ということなのでしょう。

参考記事: The Conversation

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