どうして光速に近づくと時間の流れが遅くなるの?

時間 わかる!科学

速く動いている人の時計と、ゆっくり動いている人の時計を比べると、速く動いている人の時計の方が経過時間が短くなります。これは実験により確かめられた事実です。しかし、速く動いている人も遅く動いている人もその時間経過の変化に関して気づくことはありません。この奇妙な現象のカギとなるのが、相対性理論で、相対性原理と光速不変の原理から導きだされました。

車に乗って郊外を走りながら、外の風景を眺めているのを想像してみて下さい。遠くの木があなたの車に向かって近づき、そばを通り過ぎて後ろに遠ざかっていきます。

もちろん、実際に木が起き上がってあなたのほうに歩いてきているわけではないことは誰にでもわかります。木に向かって動いているのは、車に乗っているあなたの方なのです。木はただあなたとの比較によって、相対的に動いているだけです。そのことを物理学者たちは、相対性と呼んでいます。あなたの友達が木のそばにいたとすれば、木があなたに向かって動いてくると感じているスピードと同じスピードであなたが近づいてくるのを見たことでしょう。

天文学者であるガリレオ=ガリレイは、1632年に記した著書である『天文対話』のなかで、相対性原理について初めて記し、次のような考えであると言及しています。宇宙はいつでも同じようにふるまってしかるべきであり、それは、二人の人物が相対的に異なった動きをしていたために、その現象を異なった見方で経験していたとしてもそうであるという考え方です。

もし車の中で、ボールを放り投げたとすると、重力のような物理法則が働きますが、道のわきでそれを見ている観測者から見ても同じように働いていなければなりません。しかし、あなたが車内でボールがただ上昇落下しているのを見ているのに対して、道端で見ている人にはボールが自分の方に向かってきてから遠ざかるのと同時に上昇落下しているように見えます。

特殊相対性理論と光の速度

アインシュタイン

UnsplashAndrew Georgeが撮影した写真

後に、アルバート=アインシュタインは、当時の直感的な説明とは相容れない、奇妙な観測結果を説明するために、現在、特殊相対性理論と呼ばれている理論を提唱しました。アインシュタインは、1800年代の多くの物理学者や天文学者たちの仕事を利用して、1905年に彼の理論を生み出しましたが、それらは2つの重要な要素から始まりました。相対性原理と奇妙な観測結果である、光の速さがあらゆる観測者に対して等しく、光よりも早いものは何もないというものです。光の速度を測った研究者たちが得た結果はすべて同じであり、どれだけ速く観測者が動いていたかは観測結果に影響を及ぼしませんでした。

あなたが時速100㎞で車を運転しており、あなたの友達が木のそばに立っているとしましょう。友達があなたに向かって、彼らの視点からすると時速100㎞のボールを投げたとします。すると、論理的に考えて、あなたの友達と木はあなたに向かって時速100㎞で動いてきており、ボールは時速200㎞で向かってきているように感じることになるでしょう。その推測は実際の値に極めて近いのですが、実際はわずかに間違っているのです

二つのスピードを足し合わせることで得られる予測と本当の答えの間の不一致は、二者が光の速度に近づくにつれて大きくなります。あなたがロケットで光の速度の75%で動き、友達がボールを光速の75%であなたに向かって投げたとしても、そのボールは光の速度の150%であなたに向かって動いているようには見えないでしょう。なぜなら、なにものであれ、光の速度よりも早く動くことはできないからで、そのボールもあなたに向かう速度は光速よりも遅く見えることでしょう。これらのことはとても奇妙なことのように思えるかもしれませんが、これらの観測を支持する実験的な証拠はたくさんあるのです。

時間の拡張と双子のパラドックス

ロケット

UnsplashAndy Hermawanが撮影した写真

誰が観測するかによって相対的に変化する要素は速度だけではありません。相対性のもう一つの結論は、時間の拡張という概念です。相対的にどれくらいの速度であるかに応じて、測った人によって時間の進む量が異なってきます。

相対的な各人においては、それぞれ、時間の感じ方は通常のものです。しかし、速く動いている人は、遅く動いている人よりも短い時間しか経過しません。再び出会って、それぞれの時計を比較して初めて、一方の時計がより進んでいたり遅れていたりするのがわかるのです。

このことは、相対性理論の最も奇妙な結論の一つである、双子のパラドックスを導きます。このパラドックスでは、双子の片方が高速で旅するロケットで宇宙へ飛び立ち、地球に帰ってくると、より歳をとったもう一方の双子に会うことになるというものです。重要なので強調しておきたいのは、時計で測った時間が不一致しているとはいえ、それぞれの双子において時間は通常通りに経過していて、各人もそのように感じてる(今あなたが経験している時間経過と全く同じ)ということです。

もしかしたら次のように不思議に思うかもしれません。もし双子のそれぞれが自分は動いていないとみなして、相手の方が自分に向かって動いてきているとみなすなら、それぞれが相手の方が年をとっているという観測にならないのではないかと。その答えはノーです。というのも、双子の両方が相手と相対して歳をとったということにはならないからです。

宇宙船の双子は特定の速度で移動しているだけでなく、地球上の双子に比べると加速しています。観測者によって相対的である速度とは違って、加速は絶対値です。体重計に乗ってあなたが測っている体重というものは、実際には重力による加速度です。この測定は、地球が太陽系を動いている速度や、太陽系が銀河系を動いている速度や、銀河系が宇宙を動いている速度にかかわらず一定です。

どちらの双子も、片方が光速に近づいても、彼らの時計には何ら奇妙なことは起こりません。どちらの双子もあなたや私が経験している通常の時間の流れを経験しています。再び出会って、彼らの時計を比べることで初めて違いを知るのです。この違いは相対性理論によって完全に決定づけられたものです。

参考記事:The Conversation

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