宇宙マイクロ波背景放射(CMB)は光です。宇宙全体において、私達が見ることのできる最も古くて最も遠い光です。この光は宇宙の始まりと考えられているビッグバンが起きた直後に放たれています。
しかし、この光は私達が肉眼で見ることのできる光ではありません。肉眼で見ることのできる光は可視光と呼ばれていますが、それとは違う種類の光というのもあります。マイクロ波はそういった種類の光で、他には骨折したときの検査に使うX線、ラジオなどで使われる電波といったものがあります。
はじめ、CMBはとても強いエネルギーを持ったX線の光でした。時間が経つにつれてエネルギーを失い、エネルギーの低いマイクロ波に変わったのです。
CMBは宇宙の始まりから放たれた光です。当時、宇宙はとても熱くて密度も高く、電子と陽子と呼ばれる粒子で満ちていました。これらの粒子は電荷を帯びていて、光がこれらの粒子に近づくと、荷電によって光は他の方向へと曲げられることになります。これにより、光は遠くまで進むことができません。
宇宙の冷却
しかし、時間が経つにつれて、宇宙は膨張し温度は下がります。最終的に、宇宙が十分に冷えると電子と陽子は対になって結合し始め、水素原子となります。こういった原子は、荷電していないため、電子や陽子が単独で存在する場合のように、光に影響しません。光はこれらの物質を透過し、まるで宇宙が完全な真空であるかのように、突き進めます。
宇宙は全体的に、同じ速度で温度が低下したので、こういった現象はあちこちで同時に起こりました。突然、宇宙全体で同時に、光がはるか遠くにより速くすすめるようになったのです。この光は、いまもまだ進み続けていて、地球上にもCMBとして届いています。
CMBの光は宇宙には常に存在したのですが、最初に原子が形成されるまでは遠くまで進めなかったのです。実は、この放出が起こったのは、ビックバンが起きてから38万年後であることがわかっています。そう聞くと、ビックバンからCMBの放出までの期間は、とても長いように聞こえますが、宇宙の年齢が138億年であることを考えると、それは宇宙がとても若かった頃に起きたということがわかります。
CMBは宇宙が昔どのようなものであったのかという重要な情報を沢山語っています。ビックバン理論によれば、初期の宇宙はとても熱くて放射光であふれていました。宇宙が膨張して冷えてくると、これらの放射は最終的には放出されることになります。これはまさにCMBとして現在私達が見ているものです。さらに、ビックバン理論によって予想されていた放射の温度とも一致していました。こういったことから、CMBはビックバン理論が正しいことの証拠となっているのです。
偶然の発見
CMBの発見は偶然によるものでした。アメリカの二人の科学者、ロバート・ウイルソン博士と、アーノ・ベンジアス博士は、マイクロ波望遠鏡を使って研究しているときに、どの方向にアンテナを向けても入ってくる同じ雑音となる信号を何度も観測していました。研究者たちは、この雑音信号は、望遠鏡の欠陥によって起きているのではないか、あるいは、アンテナにこびりついた鳩のフンによるものではないかとさえ、考えていました。
しかし最後には、ビックバン仮説がその存在を予言していたCMBを、最初に発見した人物に自分たちがなっていることに気づきました。この発見によって彼らは、ノーベル賞を受賞しています。
それ以来、科学者たちは多くの望遠鏡を宇宙に送って、より鮮明なCMBの画像を得ています。宇宙で最も古い光を見ることによって、私達が現在見ているすべてのものがどのようにしてできたのかを理解する助けとなるのです。
参考記事: The conversation
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