今と全く同じ経験を以前したことがあるという感覚があるのに、それは不可能であることもわかっているという経験をしたことがありますか?時にそれは、すでに起こったことの追体験であるかのようにも感じます。デジャヴとして知られているこういった現象は、哲学者たちや神経学者、作家たちを長い間困惑させ続けてきました。
18世紀の後半、何がフランス語で「すでに見た」という意味の「デジャヴ」を引き起こしているのかについて、たくさんの仮説が提唱され始めました。精神の機能障害が根幹にあるというものから、ある種の脳の障害かもしれないといったものまで、いろんな考えがあります。人の記憶の通常の機能を超えたところで起こる、一時的なしゃっくりのようなものかもしれません。しかし、こういった話題は、つい最近になるまで、科学の領域には達していませんでした。
似非科学から科学へ
今世紀初頭、アラン・ブラウンと呼ばれる科学者が、その当時までに研究者たちが書いたすべてのデジャヴに関する文書をレビューすることにしました。レビューしたものの多くは、似非科学的なもので、生まれ変わりから超能力まで、超自然と関係があるといったものでした。しかし、一方で普通の人たちのデジャヴ体験のアンケートを調査した研究も見つかりました。そういったすべての論文から、ブラウン博士はデジャヴ現象に関する基本的な発見を少しづつ集めることができました。
例えば、およそ3分の2の人たちが、人生のある段階でデジャヴを経験したことがあることをブラウン博士は突き止めました。また、多くの場合共通するデジャヴを引き起こすきっかけは、1番が場面や場所であり、次が会話であることもわかりました。また、1世紀にもわたる医学文献によるヒントから、デジャヴとある種の脳の発作の間に関連がある可能性が報告されています。
ブラウン博士のレビューによって、デジャヴの話題は科学のメインストリームの領域へともたらされました。というのも、このレビューは意識を研究する科学者たちが読んでいる科学誌と、科学者たちを読者に想定した本で発表されたからです。彼の研究は、デジャヴを調査するための実験をデザインする際の、触媒として作用したのです。
デジャヴを心理学の実験室でテストする
ブラウン博士の著書に促されて、研究チームは、デジャヴの検証可能な仮説を目的とした実験を行いました。検証した仮説は1世紀近くも古くからある仮説で、デジャヴは現在の場面と記憶の中にある思い出せない場面の間に類似性がある時に起こるということを示唆しています。心理学者たちはこれをゲシュタルト類似性仮説と呼んでいます。
例えば、あなたが病院に病気の友達をお見舞いに行くために、ナースステーションを通り過ぎたと想像してください。あなたはこの病院には来たことがないにもかかわらず、来たことがあるような感覚にとらわれます。このデジャヴの経験の原因として横たわっているのは、その場面における、家具の置き場所、空間における特徴のある物体などといった、配置が、過去に経験した別の場面と同じ配置であるというものである可能性があります。
おそらく、ナースステーションが置かれた有様、家具やカウンターに置かれた品物といったものや、廊下の角へとつながる有様が、一年前に参加した学校イベントで訪れた玄関の歓迎テーブルの設置のされ方と同じであり、廊下の家具も同じだったかもしれません。ゲシュタルト類似性仮説によると、現在のものと似たような配置を持った以前の状況が思い出せなかった場合に、現在のものとの類似性に対する強い感情だけが残ってしまうことになります。
この考えを調査するために、バーチャルリアリティを使って、参加者にいろんな場面を体験してもらいました。この方法で、参加者たちがいる環境を操作して、はっきりと違う場面であるのに、空間的なレイアウトを共有したものにすることができます。予想通り、参加者が以前見たことがあるのに思い出せない場面の要素の空間的な並びが同じものが含まれている場合に、よりデジャヴが起こりやすくなっていました。
今回の研究は、デジャヴを引き起こす要因の一つは、その時意識に登ってこなかった記憶と現在の新しい場面の間の空間的な類似性であることを示唆しています。しかし、空間的な類似性だけがデジャヴを引き起こす唯一の原因であるということではありません。最もあり得そうなのは、多くの要因が、場面や状況を馴染みのあるものにしているという可能性です。この不思議な現象に役割を持つ他の要因を探す多くの研究が、現在進行中です。
参考記事:The Conversation
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