犬は飼い主のストレスをニオイで敏感に察知している

犬と飼い主 生物学

人間の体はストレスにさらされると、多くの種類の身体的な変化が引き起こされ、心拍数から、血中の化学物質まで起こりますが、わたしたちの友である犬は、相手が他人であっても、このストレスに関連した変化を嗅ぎ分けることができます。

もちろん、犬の嗅覚能力が極めて高いことは誰でも知っていますが、今回の研究では、初めて、厳重にコントロールされた実験室で、犬の嗅覚での識別能力での離れ業がどのように、人間がストレスにさらされたことを識別するのかが調べられました。

飼い主と犬との間の関係性をさらに深く理解できただけでなく、この研究によって、不安症やパニック発作、PTSDの補助をする犬のトレーニングを改善することができます。

「今回の発見は、わたしたち人間が、ストレスを受けた時に、汗や呼気を通じて異なるニオイを生じていることを示しており、わたしたちがリラックスしている時のニオイとの違いを犬たちが嗅ぎ分けることができることを示していて、それは初めて会った人に対しても同様でした。」と、クイーンズ大学ベルファスト校の動物行動学者である、クララ・ウィルソンさんは述べています。

「この研究が明らかにしたのは、犬が人間のストレスに気づくためには、視覚も聴覚も必要ないということです。」

Unsplashahmad gunnaiviが撮影した写真

研究では、トレオ、フィンガル、スート、ウィニーの4匹の犬と36人の被験者が参加し、合計で720回の嗅覚テストが行われました。被験者たちは、複雑で難しい数学の問題に答えることが要求され、同時にどれくらいのストレスレベルにあるかのアンケートに答えました。

被験者たちの血圧と心拍数が上がると、すぐに汗と呼気のサンプルが取られました。それらのサンプルは、犬たちに提示され、タスクが始まる4分前にとられた、リラックスした時の比較対象サンプルの中から嗅ぎ分けて研究者たちに正確に伝えることができるのかが試されました。

予測通り、犬たちは高いレベルの正確性を持って、これを成し遂げました。720回の試行のうち94%で、犬たちは研究者たちに、ストレスサンプルを正確に告げることができました。

「彼らが自信を持って「違う、その二つは明らかに違ったニオイだ」と告げたのには本当に驚きました。」とウィルソンさんは述べています。

匂いを嗅ぐ犬

UnsplashObi – @pixel6propixが撮影した写真

ストレスによって誘導された化学的な変化が、匂いだけを唯一の頼りとする情報として、犬によって感知されたようです。

結果に驚いたのは、研究者だけではありません。トレオと名付けられた2歳のコッカースパニエルの飼い主は、彼の犬が研究者たちに会って、研究に参加したことが嬉しかったようで、自ら研究室の方へ行こうとさえしたと、報告しています。

「この研究で、世界を「見る」ために鼻を使うという犬たちの能力にことさら気付かされることとなりました。」と、トレオの飼い主であるヘレン・パークスさんは述べています。「この研究によって、家庭での感情の変化に気づくトレオの能力が本当に引き出されたと私たちは信じています。犬たちが高度に敏感で直感的な動物であるという認識が強化されましたし、それをするために最良の手段を使っているというのはとても価値があります。匂いを嗅ぐことです。」

先行研究では、犬がわたしたちのストレスレベルをまねており、幸福や恐怖といった感情をわたしたちが発する匂いによって検知していることが示されています。今回の研究では、詳しいデータの集合とともに、これら2つの発見をうまく結びつけました。

犬と飼い主

UnsplashArtem Beliaikinが撮影した写真

新たな研究では、犬がどのように世界を見て(臭って?)おり、道で出会った人たちとどのように関わるのかといったことに対して有用な洞察が得られました。

犬ということになると、一緒にいる人たちと気分を合わせるということを私たちは知っていますが、ニオイが大きな役割をしていたようです。また、犬は飼い主の感情に敏感で、慰めたり、苦悩を和らげようとするのも、同じ役割のおかげかもしれません。

目に見える兆候がない時でも、犬が匂いを嗅ぐことのできる人間内部の小さな変化のリストにこれを加えることができます。例えば、新型コロナの感染を嗅ぎ分けるのに犬が以前使われたことを覚えてる人もいるかもしれませんね。

「こういった研究としては初めての研究で、犬が呼気や汗のみによってストレスを嗅ぎ分けられる証拠を示しました。こういったことは、介助犬やセラピー犬をトレーニングする時に役に立つでしょう。」

「この研究は、人と犬との関係にもっと注目する時にも役立ち、犬が人の心理的な状態をどう解釈し、関わっているのかの理解を深めてくれます。」

この研究は、「PLOS ONE」で発表されています。

参考記事:ScienceAlert

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