ストレスに効く自然の中の1時間の散歩で、実際脳に起こっていること

森の散歩 心理学

人類は歴史的に、長い期間を自然に囲まれた環境で暮らしていたことは明らかで、わたしたちの先祖は何百万年もの間、広大なサバンナや、森林の渓谷などに住んでいました。

比較すると、都市というのは急激に発達した新しい環境であり、さまざまなメリットもありますが、精神的には疲れてすり減ってしまうこともしばしばです。研究によると、都市環境は、不安症や抑うつ、統合失調症を含む他のメンタルヘルスの問題と関係があります。

幸い、研究ではその解決法のヒントも示されています。自然を訪れることで、たとえ時間は短かったとしても、一連の精神的・身体的に有益な影響があり、血圧の減少、不安感や抑うつ感の減少、気分の改善、集中力の強化、睡眠の改善、記憶力の改善や、回復力のスピードアップなどさまざまです。

多くの研究が、こういった相関関係を支持していますが、まだ、学ぶべきことは多いです。ただ、森の中を歩くだけで、脳への有益な変化というのは、本当に引き起こされるのでしょうか?もしそうだとすれば、どのようにしてそれは起こるのでしょう?

その証拠を見つけるのに良い、脳の中心部にある小さな構造体である扁桃体で、ストレスの処理や、感情学習、闘争逃走反応などに関わっています。

研究では、扁桃体は、都会に住む人に比べて、田舎に住む人がストレスにさらされた場合に、活動が弱まっていることがわかっています。しかし、これらの研究が意味しているのが、こういった効果が、田舎での生活によって引き起こされているためだとは必ずしも言えません。もしかしたら、その反対で、そういった特徴を元から持っていた人たちが、田舎で生活するということが多いだけかもしれません。

都市の散歩

UnsplashJezael Melgozaが撮影した写真

こういった疑問を解決するために、マックスプランク人間開発研究所の研究者たちは、新たな実験を考案し、今回は磁気共鳴機能画像法(fMRI)の助けを借りました。

63人の健康な大人の志願者を被験者とし、アンケートへの回答と、ワーキングメモリーの検査が課され、質問に答える間にはfMRIによるスキャンが行われ、中には計画的に社会的なストレスが誘因されるように仕組まれた被験者もいました。参加者たちは、MRIの検査と、散歩に行くことなどが研究に含まれることは知らされていましたが、研究の目的は知らされていませんでした。

被験者たちは、都市(ベルリンの栄えた商業区画)と自然(ベルリンの3000ヘクタールあるグリューネヴァルトの森)にランダムに分けられ、1時間そこを散歩をするように言われました。

どちらの場所でも、被験者体は指定された順路を歩くように指示され、道を外れたり、道すがらスマートフォンを使うことは禁じられました。散歩の後、被験者たちはそれぞれ、もう一度fMRIのスキャンを受け、その間に追加のストレスを誘導するタスクと、アンケートへの回答が課されました。

研究者によると、fMRIのスキャンでは、森の中を歩いた後では、扁桃体の活動が抑制されていることが示されました。この結果は、自然が脳のストレスに関わる領域への、有益な影響の誘因となっていることを支持しています。そして、その効果はたった1時間で起こるということは明らかです。

健康

UnsplashChristopher Campbellが撮影した写真

「実験結果は、以前から推測されていた、自然と脳の健康の間にある有益な関係を支持しているだけでなく、因果関係を証明した最初の研究となっています。」と、マックスプランク人間開発研究所の環境神経学者サイモン・カーン氏は述べています。

森を散歩した被験者たちはまた、都市を散歩した被験者たちと比べて、注意力の回復の程度が高く、散歩自体も楽しめていたことがわかり、これは、fMRIの結果とも一貫性があるだけでなく、先行研究とも一致していました。

研究ではまた、都市を散歩した被験者に関して、面白い発見もしています。扁桃体の活動は、自然を散歩した人たちに比べると、減少していなかったのですが、忙しい都市で1時間過ごしたにもかかわらず、活動が増えることもなかったのです。

「このことは、さらなるストレスが引き起こされる都市環境への暴露とは正反対となることで、自然の健康生成効果を認める議論を強めています。」と研究者は記しています。

もちろん、このことが意味しているのは、都市環境への曝露がストレスを引き起こさないということではないのですが、都市に住む人にとっては、良い兆候となるかもしれません。ストレスの効果が、他の研究が示唆しているよりも、効果や広がりが小さいということかもしれませんし、ベルリンの街には当てはまらない何らかの要因が関わっているのかもしれません。

いずれにしろ、今回の新たな研究は、今までになく明確な証拠を提供しています。ストレスと関連した脳の活動は、近所の森を歩き回ることで和らげることができるのです。わたしたちの祖先たちが、行っていたように!

研究論文は、「Molecular Psychiatry」で発表されています。

参考記事: Science Alert

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