まるでテレパシー!人の脳を繋いで考えを伝達することに成功

テクノロジー

ブレイン・ブレイン・インターフェイス(BBI)といえば、SF映画や小説の中の話であり、夢の中だけに存在する今現在は利用できない未来テクノロジーと考えられてきました。しかし、ヨシヤラボでも紹介したように、脳を繋いでラットを操作するといった実験も成功しており、脳をつないで情報を伝達することは夢物語とは言えなくなってきています。

ただ、脳の働きは複雑で理解が難しく、脳をつなぐ技術の必要性に疑問があるという理由で、研究者たちは義四肢やリハビリ、精神疾患の治療などに役立てるための、ブレイン・マシン・インターフェイスの開発にもっぱら集中しています。

人での、ブレイン・マシン・インターフェイスの研究は主に、てんかんや麻痺の治療を目的としてなされており、一人の患者を対象としています。数少ないヒトにおけるブレイン・ブレイン・インターフェイスの研究では、聴覚や視覚を介さずに人の間で情報を伝達することが目的とされています。しかし、実際には、脳をつなぐだけではなく、ボタンを押すなどといった脳内活動以外の手段を使うインターフェイスとなっていました。

Photo credit: Arenamontanus on Visual hunt / CC BY

ブレイン・ブレイン・インターフェイスによるテトリス

ワシントン大学とカーネギーメロン大学の研究者たちは、新たなブレイン・ブレイン・インターフェイスを作りました。「送信者」と呼ばれる一人、あるいは複数の人たちが、このインターフェイスを使って、「受信者」の意思決定に影響を及ぼせるようにし、「受信者」が「送信者」だけが見ることのできている、テトリスのようなゲームを解くのを助けます。

実験はまだ予備的なものですが、送信者からの信号を助けとして利用することで、受信者は見えないテトリスを解くことに成功しました。社会的なシステムに脳を繋いでその一部となる未来は、思っていたよりも近いかもしれません。

ブレイン・ブレイン・インターフェイスは、彼らが過去に行った研究から引用しています。送信者は脳波計(EEG)の帽子をかぶって、研究者たちがそのシグナルから脳活動を測定できるようにします。送信者はテトリスゲームの、落ちてくるブロックを見ており、下には凸凹の隙間があって、当てはめるためにはブロックを回転させる必要があります。

別の部屋には視覚野付近に経頭蓋磁気刺激法(TMS)の装置をつけて受信者が座っています。受信者が見ることができるのは落ちてくるブロックの形だけです。下の凸凹の隙間を見ることはできないため、ブロックを回転させる判断に用いることはできません。送信者は、受信者がブロックを回転させたほうが良いと考えた場合には、17Hzで点滅している光を見てオッケーの合図とします。回転させないほうが良いと考えた場合は、15Hzで点滅する光て、ダメの合図とします。

EEGのデータによるもっとはっきりした周波数に基づいて、閾値の上下でTMS装置は視覚野を刺激し、受信者の選択をうながす信号を出します。この実験において受信者は81%の割合でテトリスを解くことに成功しています

複数送信者によるネットワーク

この実験が特に面白いのは、送信者たちが協力していないという複合的な状況も試したことです。そこでは、ある送信者はブロックを回転させたいと考え、ある送信者は必要ないと考えます。その状況をテストするため、研究者は故意にある送信者を他よりも信頼できないようにして、受信者がどの送信者が頼りにならないかを理解できるのか見てみました。定量するために「相互情報」スコアという指標を作って測定した結果、受信者が統計的に有意に、信頼度の高い送信者の情報を元に行動する傾向にあることがわかりました

この研究は、複数人による複雑な考えや行動の共有を可能とするブレイン・ブレイン・インターフェイスの基礎を築いたかもしれません。他人と考えや経験を直接共有できる世界を想像してみてください。なれない危険な土地を、文字通りあなたの代わりに歩いてくれる様になるのです。ダイバーや兵士から言葉が使えない患者まで、ブレイン・ブレイン・インターフェイスは、言葉を使うことなく集団的な知識に基づいた意思決定を助けてくれる可能性があります。機械学習による脳シグナル解明が進めば、それはおそらく可能です。

もちろん、倫理的な問題はあります。アイディアや考えが伝達されるのは、双方が同意したときに限られるべきです。技術が高まりに応じて、利用者は安全性や秘密保持について段階をおって慎重に考えるべきなのです。

テレパシーが実現したかのような研究です。信号の送信に電波を使えばそのまんまテレパシーです。脳の複雑な活動が明らかになり、伝えられる情報に複雑さを加えることができれば、言葉にならないことをそのまま伝えられるようになるかもしれません。そこまで技術が上がるにはまだ時間はかかるとは思いますが、面白い技術です。ただ、悪用されるとディストピアまっしぐらなので、利用に関しては注意が必要となってくるでしょうね。

参考記事: salon

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