心臓病を治す心筋パッチの材料は、なんと「ほうれん草」!

サイエンスニュース

再生医療として、幹細胞から人の組織を作ることはいくらかの成功を見ています。例えば、ペトリ皿に心臓細胞を作ったり、3Dプリンターで完全な耳を作ったりといったことです。しかし、心臓の複雑な血管網を作るのは簡単ではありません。最も解像度の高い3Dプリンターを使っても、うまく組み立てられないのです。しかし、ウースター工科大学の研究者ベン・グアリノの「ワシントン・ポスト」への寄稿によると、解決法が見つかったようなのです。それは、心臓組織の骨組みとして、ほうれん草の葉を使うという方法です

この研究は、「Biomaterials」で報告されており、組織工学共通の問題を解決する革新的な方法を、植物の世界に目を向けることで発見しています。植物と動物では液体の輸送方式に違いはあるのですが、血管と葉脈の構造は似ています。

ほうれん草の葉っぱを手にとって、その葉脈をよく見てみると、本当に血管とそっくりです。そして、血管も葉脈も液体を輸送するという目的は全く一緒なのです。

しかし、この構造を利用するためには、先に植物の細胞を取り除いて、葉脈を傷つけずに残さなければなりません。それを成し遂げるために、研究チームはある種の洗剤を使うことによって、葉を透けた緑から、半透明の白へと変化させました。そして残ったセルロースでできた構造物は、人の組織と共存できるのです。

研究者たちは、このほうれん草に心筋組織のたねを植え付けました。組織は葉の内部で育ちます。5日後、組織の中に顕微鏡レベルで収縮しているものがあるのを観察しました。つまり、ほうれん草の葉が脈動し始めたのです。また、葉脈に液体を通したり、人の血球サイズのビーズを通してみることで、血液を通せることも示しています。

チームの目的は、ほうれん草から完全な心臓を作ることではありません。心臓発作やその他の心臓病で苦しんでいる人たちを助ける事のできる方法を開発したいと考えているのです。具体的には、自然の心臓組織と同程度の強度や厚さを持つパッチを作って、損傷箇所の修復に役立てたいのです。

研究者たちが扱ったのは、ほうれん草だけではありません。プレスリリースによると、パセリ葉や、ニガヨモギ、細いピーナッツの根っこでも、植物の細胞を取り除くことに成功しています。将来的には、異なる植物を足場に使うことで、異なるパッチや移植断片を作ることができるでしょう。例えば、ツリフネソウの空洞の茎を動脈にしたり、木や竹から骨を作るといった感じです。植物の利用には多くの可能性が秘められているのです。

参考記事: Smithsonian.com

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