何か目標に向かって頑張っている時のことを少し考えてみてください。さまざまな感情を経験されているかもしれません。うまく進展があった時、幸せで誇らしい感情を抱き、失敗していると感じている時、不安やイライラ、悲しみといった感情を持つかもしれません。
私たちの感情は目標と緊密に結びついています。例えば、200人の大学生を1年間追跡した研究があります。調査期間中に、生徒達は6回のアンケート調査を受けています。学期のはじめに、8つの個人的な目標のリストを作るように指示されました。学期の中間では、目標の進展に点数をつけてもらい、学期が終わってから、心理的な健康についてのテストが行われています。結果は予想通りで、目標に近づくほど、心理的な健康も増すことが示されています。
目標は私たちの感情生活にとって、とても重要です。ただ目標を持つだけでも、達成いかんに関わらず健康を増進することが研究で示されているほどです。しかし、全ての目標が健康に等しく影響すると考えるのは間違いです。多くの研究で、目標にも良し悪しがあることが分かっています。
ここでは、あなたを成功や幸福にする目標の立て方についてのコツを5つ紹介します。
目標は自分にとって重要なものであること
言うまでもないことですが、人々は、個人的に重要なことを目標に掲げることが多いです。そのような目標の方がモチベーションが上がるだけなく、より積極的な気持ちを引き出します。それはわかっていても、多くの人が個人的に重要ではない目標、例えば、職務を完遂するとか、洗濯をするといった目標を成し遂げるために、多くの時間を使っています。もちろんそれは不健康なことではないです。解雇されたり、汚い衣類に囲まれると言った結果を避けられるからです。しかし、少なくとも人生における目標については、本当に大切にしたいことであるのか、確認する価値はあるでしょう。
目標は、簡単すぎず、難しすぎず
簡単な目標を達成するよりも、難しい目標を達成したほうが積極的な感情が強く引き起こされます。
難しい目標の方が、モチベーションも上がり、良い結果を生みやすいです。ある古典的な研究では、大企業のタイピスト達を10週間、追跡調査しています。タイピスト達には、週ごとに打ち込む行数の目標が与えられました。あるタイピストには、より挑戦的な行数の目標が与えられています。その結果、より難しい目標を与えられたタイピストの方が、良い結果を出しています。
もちろん、難しい目標はある程度までは挑戦しがいがあります。しかし、目標が難しすぎると、モチベーションを損ないます。
もし、ジェーン・オースティンの「高慢と偏見」の全300ページを10分で読むという課題を与えられたとします。達成できれば10万円もらえるとしても、挑戦しがいがあるとは思えないでしょう。しかし、1週間の時間が与えられ、同じ報酬が得られるとすれば、やる気が出るはずです。
つまり、最も挑戦しがいのある目標というのは、心理学者達の言うところの「ストレッチ目標」に当たります。背伸びする必要のある難しさはあるけれども、決して不可能ではない目標のことです。幸い、ほどんどの目標は、達成期日を早めたり、より完璧さを求めるといった詳細を加えることで、ストレッチ目標にすることができます。
何かを避ける目標よりも、成し遂げる目標を
目標には、何かを達成したり、獲得したり、量を増やしたりといったものがある一方で、何かを避けたり、止めたり、減らしたりというものもあります。あなたも、両方の目標を持った経験が有るでしょう。もし、減量や禁煙に挑戦したとすると、それは、回避目標です。
対象の切り取り方によって、多くの目標は回避目標にも達成目標にもできます。「1人にならないようにする」という目標と「友達をたくさん作る」という目標がその例です。習慣的に達成目標という形で目標を立てる人は、回避目標を立てる人よりも、成功する傾向があります。
その理由の一つは、回避目標においては、避けようとしている不快な結果に注意が向くことです。失敗する可能性にとらわれるよりも、得られる報酬を思い描き続ける方が良いのです。
目標は具体的に
目標が具体的になればなるほど、結果の形がわかり、達成方法も詳しくわかるようになります。例えば、「健康なものを食べる」という目標よりも、「毎食、サラダを添えて食べる」という目標のほうが具体的です。
通常、具体的な目標を持った時の方がうまくいきます。ある研究では、大学生に生活目標を15個リストアップしてもらいました。研究者達はその目標の具体性を5段階で評価しています。それから、参加者達にアンケート調査を行って、気分や心の健康を評価しました。その結果、より具体的な目標を持った参加者では、心理学的悩みや抑うつと言ったものが少なくなっていました。
自分が大事にしている価値と目標を合わせる
心理学者は、「自己一致」という専門用語を使って、自己成長と対人関係の親密さといったものが重視される、深い価値観を満たすような目標を立てることを推奨しています。そういった目標は、富や地位、名声と行った付随的な報酬につながる表面的な目標とは対照的です。多くの研究では、自己一致した目標のほうが達成され易いことが示されており、それは、おそらく、より努力を注ぐように動機づけられるからです。自己一致した目標を多く持った人は、より幸福である傾向もあり、それは、おそらく、その目標が最終的により満足の行くものだからでしょう。
もちろん、私達は皆、異なった価値観を持っており、すべての目標を、人生において最も意味を見出せることに合わせる必要はありません。しかし、目標の中に意味を見いだせるものが無いのであれば、小さなものでのいいので、変化を加えることで、日々に小さな価値をもたらせないかを考えてみる価値はあります。
驚くとともに安心できるのは、これらの5つのコツは、いずれも目標の中身とは関係ないということです。「恋愛の目標は仕事の目標よりも上か?」とか「人間関係に焦点を当てるほうが、趣味よりも健康では?」といった疑問が湧いたかもしれません。しかし、その目標が何であるかということは、健康に与える影響は小さく、目標の立て方のほうが影響は大きいのです。ほんの少し事前に考えることで、ほぼすべての目標を5つの基準に当てはめることができます。それによって、最終的には、成功することが増えるだけでなく、人生への満足感も高まるのです。
参考記事: Psychology Today
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