寝不足になっていませんか?睡眠障害は持っていなくても、社交活動が忙しかったり、仕事で遅くなったり、赤ちゃんのお世話だったり、ネットフリックスで一気見しないといけないドラマがあったりと、睡眠時間を削る理由には事欠きません。しかし、睡眠不足が慢性化してしまうことは、健康にとって悪い影響があることがわかってきています。
睡眠時間が平均6時間から7時間以下になると、睡眠は不足し、肥満や2型糖尿病、心臓病にかかるリスクが高くなることが大規模な調査でわかりました。数々の研究の蓄積から、睡眠不足が常態化することによって生理機能が変化し、慢性病につながる過程がわかり始めています。睡眠不足との関わりが研究されている分野は主に3つあります。代謝、免疫、そして心機能です。
健康な人が睡眠不足におちいった時の反応を調べるために、ボランティアを対象とした実験が行われました。実験は施設で数日間から数週間行われており、睡眠時間の制限、食事や飲み物、照明や室温、身体活動や社会的な交流などのすべてを管理下において行われています。
研究に使われた条件は、数日の徹夜あるいは数週間の睡眠時間の削減で、睡眠時間の減少による代謝や免疫、心機能への変化が調べられました。
睡眠不足は肥満につながる
多くの研究から、睡眠不足が糖代謝を悪化させることが示されています。糖代謝は、食物から取り込まれた糖を蓄積あるいはエネルギーへと変換する機能です。実験から、短期間の徹夜は、健康で若くやせた成人の糖耐性やインスリン感度を減少させることがわかりました。
糖代謝の変化が常態化すると、肥満や2型糖尿病にかかるリスクが高まります。この糖代謝の変化と、睡眠が不足することによる高カロリー食品への嗜好の変化が組み合わされると、体重を落とすことが難しくなってしまいます。
さらに、徹夜や睡眠不足が、通常の食欲ホルモンのリズムを変えてしまうこともわかってきています。ホルモンであるレプチンは食欲を抑制し、グレリンは食欲を増進します。睡眠が不足すると、この2つに変化が起こります。ホルモンの変化で食欲が増すことによって摂取カロリーが増え、体重増加や肥満の原因になるのです。
睡眠が8時間以下になると、BMIが増えるという研究もあり、短い睡眠がレプチンを減少させ、グレリンを増加させるというデータもあります。体重を減らしたい場合はよく寝たほうが良さそうです。
睡眠不足で免疫系がダウン
健康な睡眠は、適切な免疫機能を保つのに不可欠です。徹夜は、免疫機能に変化をもたらし、炎症性の症状やガン、感染性の病気のリスクを増やす可能性があります。
研究により、一晩の徹夜は、自然免疫反応を弱めることがわかっています。また、徹夜によって炎症マーカーが増加していることも明らかになっており、インスリン抵抗性や心疾患、骨粗鬆症をまねく可能性があります。
さらに、面白い研究結果があります。6日間の4時間睡眠で睡眠不足の被験者がインフルエンザワクチン接種を受けると、抗体の数が50%も少なくなっていることがわかりました。つまり、感染症に対する適切な免疫反応には良い睡眠が必要なのです。
心臓の健康
睡眠不足と高血圧や心疾患の関係が明らかにされています。女性を対象とした長期間の調査によると、5時間以下の睡眠をとっていたショートスリーバーの女性と、9時間以上の睡眠をとっていたロングスリーパーの女性に、高い心疾患のリスクが見つかりました。
睡眠時間の減少が心疾患に結びつく原因としては、交感神経過緊張が考えられます。これは、闘争逃走反応として知られる、ストレスにさらされた身体が示す反応で、血圧の増進と糖耐性の減少を引き起こします。
ここまで、睡眠不足による悪影響を3つ紹介してきましたが、対処法はあるのでしょうか?
あります。睡眠不足による悪影響は、睡眠時間を改善する事により、減少、反転させることができるという研究結果があります。つまり、習慣的に十分な睡眠をとったり、昼寝をしたり、週末に「寝だめ」することで睡眠不足による悪影響を緩和することができるのです。
平均6時間以下しか寝ていないあなた!睡眠時間が足りていません。健康のために7時間睡眠の習慣をつけるか、昼寝や休日の「寝だめ」で不足を解消しましょう。
参考記事: The Conversation
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