ナノ製造技術に新技術。おむつの材料を使って立体を縮小させる新手法を開発

サイエンスニュース

ナノスケール精度の微小構造物を作るナノテクノロジーに、大きな革新となる技術がもたらされました。この技術は、「インプロージョン・ファブリケーション(縮小製造)」と呼ばれ、おむつの給水素材であるゲルを足場にして材料を配置し、脱水することで縮小させるという方法をとります。研究はMITで行われ、成果は“Science”で発表されています。

Photo credit: wintercool612 on Foter.com / CC BY

この技術によってどのような材料でも、ナノスケール解像度の立体構造物として組み立てることができる上、その技術は容易に利用でき、コストも安くすみます。そのため、生物学から光学、材料科学からロボット技術にいたるまで想像できる範囲でも応用範囲は多様であり、ナノ加工技術における革命といえるでしょう。

今まで、ナノ構造物を作る方法にはさまざまな限界がありました。光によってエッチングする技術で、ナノスケールの構造物を作ることはできますが、できるものは2次元に限られます。2次元のものを積み重ねることで、立体物をつくる事もできますが、時間がかかる上に難易度も高くなります。3Dプリンターのようなもので直接ナノスケールの構造物を作る方法もありますが、使える材料はポリマーやプラスチックに限られ、機能を持った構造体にすることはできません。それに、構成できるデザインも、作成時に自立できるものに限られます。

小さく縮める方法

今回発表された技術では、このような限界が取り払われています。この技術のアイディアの種は、生物学を研究していた、開発者が発明した観察したい試料を物理的に拡大して顕微鏡観察する方法にありました。観察したい組織の試料をゲルに埋めこんだあと、広げることによって通常の顕微鏡で観察できる範囲を広げました。この方法は現在広く使われるようになっています。

研究者たちは、ナノ構造物を作るプロセスとして、この過程を逆転させることを思いつきました。非常に吸水力の高い、オムツにも使われているポリアクリレートを土台として使うこと思いついたのです。

Image: Daniel Oran

この土台となる素材を蛍光分子を含んだ溶液で浸し、吸水させて膨れ上がらせます。その土台に、レーザーを使って含まれる蛍光色素を吸着させます。この吸着には2光子励起顕微鏡が使われており、土台の奥深くにまで正確に蛍光色素をくっつけることができます。蛍光分子は他の任意の分子をくっつけるためのアンカーの働きをします。くっつけることのできるものは、量子ドットから、DNA、金分子まで幅広く利用可能です。

目的の分子をくっつけた後、酸を加えて土台全体を収縮させます。酸はポリアクリレートの負の電荷をブロックするため、反発し合うことなく収縮させることができます。この過程では、縮尺は各次元で10分の1、合わせて1000分の1のサイズにまで小さくできるのです。

ドラえもんの道具、スモールライトが発明されたというわけではありませんが、光を使って、似たような過程でナノスケールの立体構造物を作ることができるようになったのです。なんでもくっつけることができるようなので応用できる範囲は広いです。小さいは正義?なのです!

参考記事: World Economic Forum

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