老化研究に躍進!老化の原因をついに発見!若返りに成功!

赤ちゃん 医学

13年かかりましたが、デビッド・シンクレア博士と共同研究者たちは、何が老化を引き起こしているのかという質問に対する答えをついに発見しました。1月12日の科学誌「Cell」で発表された研究で、遺伝学教授であり、ハーバードメディカルスクールのポール・F・グレン老化生物学研究センターの共同管理者であるシンクレア氏は、新発見である老化時計が細胞の老化を加速したり、巻き戻したりできることを示しました。

老化の研究者たちは、細胞の老化を引き起こしているものが何かということで議論してきましたが、はじめは、DNAへの突然変異に焦点があてられていて、細胞の通常の働きを乱すことで、細胞死を誘発しているとしてきました。しかしこの説は、年齢を重ねた人の細胞のなかで突然変異によって穴だらけになったものがあまりないという事実や、突然変異を抱えた多くの細胞を持ったヒトや動物が若年で老化しているように見えないという事実から、支持されていません。

若い手老人の手

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そこで、シンクレア博士はゲノムの別の側面である、エピゲノムに焦点を当てました。個体のすべての細胞は、同じDNAの設計図を持っている一方で、エピゲノムは皮膚の細胞が皮膚の細胞になり、脳細胞が脳細胞になるようにするためのものです。これは、どの遺伝子のスイッチを入れて、どの遺伝子スイッチを切ったままにするのか、といった指令を異なった細胞には異なったように発令することで行われます。エピジェネティクスは、裁縫士があてにしているシャツやズボン、上着などを作る際の型紙による指示に似ています。最初の生地は同じですが、型紙によって最終的な洋服がもつ形や機能が決定されます。細胞では、エピジェネティクスによる指令が、分化と呼ばれる過程において、異なる身体構造や機能を持った細胞へと導きます。

Cellに投稿された論文で、シンクレア博士とそのチームはマウスの年齢を加速させただけでなく、老化を逆行させることもできたとし、動物の若さの生物学的な指標を回復できたと報告しています。この逆行は、老化を推し進める主要な要因は、DNAの突然変異ではなく、どのようにしてか間違ってしまったエピジェネティクスによる誤指令によるものであることの強力な例証となりました。シンクレア博士は、老化とは、細胞が機能し続けるための要となる指令が失われた結果であることを長い間提唱し続けていて、「老化の情報理論」と呼んできました。「老化の根底にあるのは、細胞内における情報の喪失であり、ダメージの蓄積ではない」のだと博士は述べました。「老化を考える上でのパラダイムシフトです。」

再起動

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博士の最新結果は、この理論を支持しているようです。これは、ソフトウェアがハードウェアを離れて操作される様に似ています。時に、壊れて再起動が必要となります。「もし老化の原因が、細胞に多くの突然変異が入ることだとすれば、若返りは不可能でしょう。」「老化の過程を巻き戻せることを示したことで、システムは損なわれておらず、バックアップのコピーもあって、ソフトウェアに必要なのは再起動であることが示されました。」

研究者たちは、マウスを使って、エピジェネティクスの指令のバックアップコピーを再起動することで、細胞を再起動する方法を開発しました。つまり、細胞を老化の経路へと導いている劣化したシグナルを消し去ったのです。老化の効果を模倣するために、若いマウスのDNAに複数の切れ目を導入しました。(実験室の外では、エピジェネティク変異は多くの事柄で引き起こされます。例えば、喫煙や汚染や化学物質への暴露などです。)このようにして「老化」させられると、マウスは数週間以内に老化の兆候を示し始め、毛皮が灰色に、エサが変わっていないのに体重が減少し、活動量が落ち、不健康的で脆弱になりました。

マウス

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再起動は、遺伝子療法の形で行いました。再プログラム化するように指令を出す遺伝子3つを使ったのです。マウスの場合、この指令は細胞の個性を決定するエピジェネティクな変化を再出発するように導きました。細胞の個性とは例えば、老化に脆弱な腎臓や皮膚といった細胞です。利用した遺伝子は、ひとそろいの山中因子から来たものです。山中因子はノーベル賞受賞者である山中伸弥教授が2006年に発見した4つの遺伝子のセットで、成人の細胞を胎児の状態まで巻き戻し、再び発生または分化を開始できる幹細胞の状態にします。シンクレア博士は細胞のエピジェネティックな履歴を完全に消去するつもりはなく、ただ、エピジェネティックな指令を再設定するに十分な再起動をしたいと考えました。4つの中山因子のうち3つを使うことで、時計を約57%巻き戻し、これは、マウスが若返るのには十分でした。

「私たちは幹細胞を作っているのではなく、細胞が自分の個性を思い出せるように、時計を巻き戻しているのです。」とシンクレア博士。「これが広く機能したことには本当に驚いています。老化を進めたり巻き戻したりできない細胞種はまだ見つかっていません。」

マウスでの若返りというのは、一つの成果です。しかし、人間でも同じように効くのでしょうか?それは、シンクレア博士の次の段階であり、彼のチームはすでに、ヒトではない霊長類の系でテストを開始しています。時計の巻き戻しをオンオフできるように、抗生物質ドキシサイクリンと再生プログラム遺伝子の活性を結び付けた生物学的スイッチを取り付けています。対象動物にドキシサイクリンを与えると、時計の逆転が開始され、投薬をやめるとこの過程もストップします。シンクレア博士は、ヒトの神経、皮膚、組織を結合するのに役立っている線維芽細胞をつかって、実験室での研究を行っています。

2020年にシンクレア博士は、マウスを使って高齢のマウスの視力を回復する方法を発表しました。新たな結果は、この方法が一つの組織や器官だけでなく、個体の全身に応用できることを示しています。博士の期待としては、目の病気がヒトにおける若返りのテストの最初の症例になるとしていて、というのも、目の患部に直接注射する遺伝子療法が使えるからです。

老人の視力検査

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「私たちは、この方法の後ろには老化があると考えていて、老化と関連した病気は、もとに戻せると考えています。目の症例についてですが、新しく神経を生み出す必要があるという誤った考え方があります。ある症例では既存の細胞はただ機能を失っているだけです。なので、それを再起動すれば、よくなります。これは医療に対する新しい考え方です。」とシンクレア博士。

それが意味するところは、心臓病やアルツハイマーのような神経変性疾患のような慢性症状の患者は、病気に行き着くことになった老化の過程を逆転させることで、大部分治すことができるかもしれないということです。こういった未来が来る前であっても、この方法は、そういった病気を研究するための重要な新たな道具を研究者たちに提供するでしょう。多くの場合、研究者たちは、老化の病気モデルとして、若い個体や組織に頼っていて、これは老化の症状の再現としていつでも信頼できるものではありません。この新たな系では、マウスを素早く高齢にできるので、たとえば、ヒトの脳の組織を70歳のものと同等にしてモデルマウスに移植して、アルツハイマー病を研究することができます。

そのうえ、組織や器官、そして、動物やヒトの全身を老化させたり若返らせたりできるという含みは、強烈です。シンクレア博士は視神経を何度も若返らせていて、それは生物倫理学者たちや、老化の時計を継続的に巻き戻すことの意味について考えている社会により多くの疑問を呈しています。

今回の研究は、老化の意味を再定義する最初のステップでしかありません。そして、シンクレア博士は、このことが答えよりももっと多くの疑問を生み出すことを認めている最初のひとりです。「実際どのように若返りが起こっているのか、私たちは理解していませんが、それが機能していることは知っています。」と彼は言います。「私たちはそれを、体の部分の若返りに使うことができますし、おそらくは、革命的となるであろう薬を作ることもできるでしょう。現在、私は年寄りを見るとき、彼らが年を取っているとは見ていません。彼らを、再起動を必要としている系を持った人と見ています。もはや問題は、若返りが可能かというものではなく、いつ可能になるのかです。」

参考記事:Time

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