ボディビルのサプリメントとして使われる、アルファケトグルタル酸(AKG)を餌として与えたマウスが、老齢になっても健康で寿命も伸びることがわかりました
老化抑制薬のラパマイシンや、糖尿病治療薬メトフォルミンといった物質もマウスで同じような効果が見られています。
しかし、AKGはマウスや私達の体の中で自然に合成される物質であり、飲んでも害が無いことがすでにわかっています。
そのため、他の抗老化薬よりも研究によってもたらされる潜在的可能性は大きいと言えるでしょう。
AKGは、私達が食物からエネルギーを得るために細胞が利用している代謝回路の一部を担っています。
AKGはボディビルダーに活用されているだけでなく、医師が骨粗鬆症や腎臓病の治療のためのサプリメントとして処方することもあります。
AKGが抗老化物質として最初に注目を浴びたのは、2014年のことです。
線虫の平均寿命を50%も引き伸ばすことが実験でわかったのです。
これはカロリー制限による長寿命に匹敵するものですが、極度な節制を必要としません。
また、AKGの老化への効果はショウジョウバエでも確認されています。
老化研究で有名なバック研究所で行われ、「Cell Metabolism」で発表された新たな研究は、哺乳類を対象としています。
人間の年齢で55歳に当たる18月齢のマウスのグループに、餌の2%相当をAKGにして、死ぬまで、あるいは21ヶ月間与え続けて影響を調べました。
AKGの血中濃度は、年齢が進むごとに薄くなっていきますが、その濃度を若いマウス並みに回復させるのが目的です。
違いが現れ始めたのは、餌を与え始めてから数カ月後でした。
AKGを与えられたマウスの毛並みは黒ぐろとつややかになり、対照群よりも若くみえるようになりました。
それに加えて、31項目の老化による肉体的な衰えテストでは、平均して40%以上の改善が見られました。
項目には、毛の色、聴覚、足取り、握力といったものが含まれます。
また、メスのマウスでは中間値で8%から20%の長寿命化が見られました。
しかし、心機能やトレッドミルでの持久力は上がっておらず、認知機能は調べられていません。
老化の改善が起きた要因を調べたところ、炎症を抑える物質レベルの増加が見られました。
恒常的な炎症は、老化が原因で起こる病気の引き金となります。
研究者の一人であるブライアン・ケネディーは、現在シンガポール国立大学にいますが、すぐにでもボランティアを対象にAKGの研究を行う予定です。
人間でも同じように健康寿命や、平均寿命が伸びるのかはわかりませんが、線虫からマウスまで、同じように抗老化作用があることから、普遍的な作用があるのかもしれません。
害もなさそうなので、長生きを期待して飲み始めてみるのもいいかもしれませんね。
参考記事: Science
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