花は聴いている!ミツバチが近づく音を感知して蜜を出す植物

サイエンスニュース

マツヨイグサは、花弁を耳代わりにしてハチの羽音を聞いた数分後に甘い蜜を出すことがわかりました。発見したのはイスラエル、テルアビブ大学の研究者たちで、発表前の論文を公開するプレプリントサーバ、「bioRxiv」で公表しています。

マツヨイグサを使った実験で、飛んでいる花粉媒介者であるミツバチの音や、その同等の周波数で作った合成音を聞かせることで、音を聴いた3分以内に、花が甘さを増した蜜の分泌がうながされることが示されました。

植物の耳の役割をしているのは、その花弁です。花弁はそばを飛んでいる花粉媒介者が出す周波数の音波によって震えることで、音の感覚器官として働くのです。

「私達の結果は植物が花粉媒介者の出す音にすばやく反応することを示した、最初の記録となりました。これは、生態学的にも適切な方法でなされています」と研究者は語っています。

近寄ってくる花粉媒介者としてのハチの音を聴く事ができる能力は、植物に大きな利益をもたらします。花を咲かせる植物の87.5%は、繁殖に花粉媒介者の助けを借りています。そういった植物では、花粉媒介者を魅了することが適応度を上げることになります。その方法としては色や香り形を信号として使って、報酬に蜜や花粉を食べ物として与えることです。

Photo on Visual hunt

しかし、特に甘くした蜜などの特別報酬を提供することは、代謝的にコストがかかります。また、腐敗する可能性も高くなります。蜜が多いと微生物による腐敗の対象となるからです。また、アリなどの花粉を媒介しない虫に横取りされることもあります。

もし、植物が近づいてくる花粉媒介者を感知できれば、良質な蜜を花粉媒介者がたどり着いたときにだけ出すことができます。そうすることで、花粉媒介者による、受粉や繁殖の可能性を高めることができるのです。

花が音を聞く感覚を持つ可能性があるのかを調べるために、科学者たちは花弁の振動を測り、その音の反応として蜜が濃くなるのかどうかを確かめました。ハチの録音や合成した似た音、全く異なる音など、様々な周波数の音の効果を解析したのです。

その結果、植物が進化してきており、あるいは、未だに進化し続けている可能性が示されました。それは、音がよく聞こえるように花の形を通しての進化です。また、人が生み出す騒音が、適切な花粉媒介者を惹き付ける能力に悪影響を及ぼす可能性も示されました。騒音によって、聴力や蜜の分泌が混乱してしまうのです。

植物の音を聞く能力というと、クラッシック音楽を聞かせると良く育つとか、褒めると育ちが良くなるといったすぐには信じられない現象が知られています。しかし、植物の環境を感知する能力の研究は近年注目されていて、その感覚は意外に鋭く、信号の伝わる速度も早いことがわかっています。今回の研究も、そういった植物の意外な能力を示す一例となりました。良い作物が得られるように、農業にも応用できるかもしれませんね。

参考記事: The Times of Israel

コメント