記憶力にも効果あり!運動がもたらす脳機能への好影響

医学

運動がもたらす健康への好影響は証拠がそろってきています。過去には、体重を減らしたり、血圧を下げることによる、心血管の健康への影響が強調されていました。しかし、最近は脳への好影響も注目されて来ています。

歩くことで育つ神経

成熟した脳であっても、高い柔軟性あるいは、可塑性を持っています。過去に外傷的な脳の損傷が永続的な影響を及ぼすという証拠があったために、柔軟性はないと思われていたのとは対照的です。

柔軟性が確認されたのは、地図やGPSを使わないロンドンタクシーの運転手がどれほど街を案内できるのかを調べた研究によってです。彼らは街の知識についての公式なテストを受けました。

運転手たちの道案内の能力は、空間記憶に関わっている海馬の領域の大型化を伴っていました。タクシーの運転を長く行っていたドライバーほどその傾向は高くなっていたのです。つまり、はじめから例外的に空間認識力を持った人が、職業による選択を受けて残ったわけではないのです。

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運動すると細胞の成長が刺激されるという理論をサポートする驚くべき証拠が、カナダの神経科学者によって見つかっています。自発的に運動することで、海馬の歯状回にある幹細胞の細胞分裂が大きく増加していることがわかったのです。なので散歩愛好者は、脳細胞を多く持つという利益を得ていることになります。

海馬は新しい記憶を形成するのに重要な働きを持っており、さらにはタクシーの運転手の研究でも見られたように、空間的な問題解決能力も持っているのです。

老化と運動

感覚器官が脳機能の大きな一部を担っているのと同じで、筋肉も脳との関わりを持っていることを私達は忘れがちです。感覚が刺激になるとするなら、筋肉は反応を生み出します。

そこに気がついていれば、健全な体に健全な心は宿るということわざが説得力を持ってきます。確認の取れた証拠の中には、高い教育を受けた人たちが、教育をあまり受けなかった人たちよりも長生きしているというものがあります。この発見をもっともらしく解釈するならば、よく訓練された脳は老化による悪影響に抵抗し、それは増加した認識需要を満たすために、しっかりした循環系を持つようになったためだと考えられます。

最新の証拠では、身体的な活動が筋肉系に対して同じような働きをしていることが示されています。中年から老年の活動を続けているサイクリストたちは、健康な若者と比べても引けを取らない筋肉系を持ち、老化が見られませんでした。特に、筋肉量と強さの両方で衰えは見えず、かつて考えられていた、避けられない老化の影響という見方を変化させています。

運動による脳への刺激の健康への影響

運動が海馬内の幹細胞の分裂を促進するという事実は、年をとってからも神経や認識機能は改善できるということを意味します。

あるサイクリストの研究では、運動がT細胞と呼ばれる免疫細胞の生産に影響を及ぼしていることがわかっています。T細胞は胸腺で生産されますが、胸腺は普通20歳をすぎるとT細胞の生産力が落ちていくことがわかっています。しかし、サイクリストたちでは、若い人たち同様、T細胞の数は減っていません。

なぜ運動によってこのような好影響が胸腺でおこるのかは、ほとんどわかっていません。わずかにわかっているのは、胸腺の働きを神経系が調節しているということです。身体活動で活発化する交感神経が、重要な働きをしているのかもしれません。その真偽によらず、動作は神経系の出力としての側面があり、運動はいつも中枢神経系によって活動させられているということを忘れてはいけません。

結論

私達は年をとるにつれて、弱くなったり病気になったりする必要性はないのです。逆に、訓練を欠かさない年老いたサイクリストは、運動していない老人よりも健康に生活する経験を得ています。

循環器系だけでなく、認知機能についても免疫系についてもメリットのある運動です。脳細胞を増加させると聞くと、少しづつでも良いので日々の生活に取り入れたくなります。運動嫌いな方でも、まずは、あまり負担のかからない散歩からでも始めてみませんか?

参考記事: Psychology Today

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