昨年から猛威をふるい、現在もその勢いに衰えの見えない新型コロナウイルス(COVID)ですが、どのようにしてこのパンデミックは終わるのでしょうか。根絶は可能なのでしょうか?
ウイルスは宿主に感染して自らのコピーを量産して放出し、次の宿主へと感染して広がる、遺伝物質を持った分子機械のようなものです。
新型コロナウイルスによるCOVID19のパンデミックは、自然災害みたいなもので、勝手に消えていくものだと考えているひともいるようですが、それは誤解です。
ウイルスの中にはうまく隠れて再び拡大する機をうかがうものもあるうえ、突然変異によってさらに強い感染力を持つに至ることもあります。
現在は姿を消している、かつて流行したウイルス

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インフルエンザを引き起こすウイルスについて、あなたはすでに知っているかもしれませんね。
しかし、120年前までヒトに感染してインフルエンザを引き起こしていたウイルスが今は根絶していることは知らないかもしれません。
また、もっと新しいインフルエンザウイルスの中にも根絶したものはあります。
たとえば、1957年に発生してパンデミックを引き起こし、アメリカ国内で約100,000人の死者を出した恐ろしいアジア風邪のウイルスはすでに絶滅しています。
「スペイン風邪」と呼ばれる恐ろしい病気を引き起こしたウイルスも良い例の一つです。

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1918年に世界的なパンデミックを引き起こして、世界中で多くの犠牲者を出しました。
このウイルスは、1921年まで色んな場所で散発的な感染者を出し続けましたが、それまでに、多くの人が免疫をつけ、身体がウイルスを排除する方法を獲得していました。
つまり、多くの人が免疫を獲得した結果、感染の広まりはパンデミックのようにではなく、散発的にあちこちで起こるにとどまるようになったのです。
そのため、スペイン風邪を引き起こした種類のインフルエンザウイルスは、ほとんど絶滅してしまったのです。
じゃあ、COVIDウイルスもなくすことはできるの?

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意図的にウイルスを絶滅させようという試みもされています。
その手段として使われるのが、ワクチンです。
ワクチンは、天然痘と呼ばれるかつて、世界で最も恐ろしい感染症だったものを根絶させるのに役立ちました。
ワクチンはまた、ポリオや麻疹を根絶することが期待されています。
COVIDのワクチンも開発が行われていて、すでに使用が認められ接種されはじめたものも複数あります。
開発の早かったものは、mRNAワクチンと呼ばれる種類のもので、このタイプのワクチンの開発が成功したのは世界初です。
COVIDのワクチンは他にもいろんなタイプのものが開発されています。
接種が広く行われるようになると、感染の拡大を防ぐのに大いに役に立つと思われますが、ウイルスを完全には止められない可能性があります。
というのも、以前ほど多くのひとが感染する場所は無くなったとしても、いぜん感染する人は出てくるだろうというのです。
今の状況は、11年前に現れた豚インフルエンザと呼ばれる新しい病気の場合と少し似ています。
それは、他のインフルエンザ株とは異なっていたため、急速に広まってパンデミックとなりました。
同じことが今、COVIDでも起こっています。
科学者たちがワクチンを開発するまでに、世界で10人に一人が豚インフルエンザに感染していました。
一年後には、ワクチンが届くようになり、豚インフルエンザにかかる人は次第に減っていきました。
しかし、豚インフルエンザは根絶していません。
未だに隠れていて、再び人に感染する準備が整うのを待っています。
しかし、ワクチンがあるために、そこまで多くの人が病気にかかることは無いのです。
COVIDはいつどのようにして終わるの?

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SARSはCOVIDに似たウイルスです。
2003年に発見され、8000人以上の感染者を出しました。
しかし、2004年までに、人での感染者は見られなくなっています。
SARSをなくすためには、いくつかの手法が併用しておこなわれました。
その中には、隔離と検疫が含まれています。
似たような手法が、COVIDの場合も用いられています。
しかし、なぜSARSの広がりを防げた手法が、COVIDではまだ効果が出ていないのでしょうか。
COVIDが持っている厄介な問題の一つは、症状の出ない感染者がウイルスを広めてしまうことです。
つまり、セキや鼻水がでなくても、他の人にウイルスをうつしてしまう可能性があるということです。
そのような理由から、科学者の中には、COVIDウイルスが根絶することは無いのではないかと言う人もいます。
その代わりに、インフルエンザのように毎年だれかがかかる病気になるのかもしれません。
それは、パンデミックが終わったあとも、長い間私達の間にあり続けるものとなるでしょう。
参考記事: The Conversation
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