ウイルスって何?どうやって広がって、病気を引き起こすの?

コロナウイルス わかる!科学

ウイルスは生物学的な存在ではありますが、生き物であるのかは議論の分かれるところです。特定の宿主にだけ感染し、自らのコピーを生み出し爆発的に増えることで健康被害を引き起こします。

ウイルスは地球上に最も多く存在する生物学的な存在です。

ある専門家の推計によると、その数は、およそ10,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000個であると言われています。

すべてを一直線に並べると、銀河の端から端まで届くほどの数です。

自然が生み出したナノテクノロジーととらえることもできます。

ナノメートルの尺度に詰まった分子機械で、他の生き物の細胞に侵入して乗っ取り、自らを増殖させます。

大多数のウイルスは人間にとって無害ですが、中には病気を引き起こしたり、命に関わるものもあります。

ウイルスは生きているの?

コロナウイルス

Credit: NIAID Rocky Mountain Laboratories (RML), U.S. NIH, CC BY

ウイルスは生き延びて増殖するために、他の生き物の細胞を必要とします。

というのも、ウイルス単体では食べたりエネルギーを蓄えたりすることができないからです。

言い換えると、宿主の外では機能できないということで、非生物であるとみなされることが多いです。

宿主の外では、ウイルスは自らを包み込んでビリオンと呼ばれる独立した粒子となります。

ビリオンは一定期間だけ外の環境で「生き延びる」ことができます。

ウイルスにとって生き延びるとは、構造と宿主への感染力を維持することです。

ビリオンが感染できる宿主の細胞に取り付くと、細胞内へと入っていけます。

感染できる条件は、細胞表面のタンパク質とビリオン表面のタンパク質の相性にあります。

細胞内に入ってしまうと、ウイルスは細胞をハッキングして、たくさんのビリオンを生み出させます。

生み出されたビリオンは細胞外へと移動します。

その過程で、宿主の細胞は破壊されてしまうのが普通です。

そしてビリオンは他の多くの細胞へと感染を拡大させます。

このようなライフサイクルを持つことから、生物であると考えることもできます。

ウイルスは生物と非生物の両方の性質を持つことから、生物であるのかどうかという問いは、哲学的な問いであると言えます。

いずれにしても、ウイルスが生き物に対して大きな影響を与えていることは間違いないでしょう。

ウイルスは何でできてるの?

ウイルス粒子の中心にはゲノムがあります。

これは、ウイルスの複製に必要な情報を持ったDNAあるいはRNAです。

ゲノムである核酸は、キャップシッドと呼ばれるタンパク質によって包まれて守られています。

ウイルスの中には、脂質でできた外膜(エンベロープ)を持つものもあります。

COVID-19を引き起こすコロナウイルスも、こういった外膜を持つウイルスの一つです。

石鹸はこの外膜を溶かすことができ、ウイルス全体を破壊することができます。

石鹸で手を洗うのが予防につながるのは、そういった理由があるからです。

ウイルスは何を攻撃するの?

ウイルスは決まった獲物を狩る捕食者みたいなものです。

私達の細胞を識別できない種類のウイルスは、私達にとっては無害です。

また、感染できるけれども、健康被害を引き起こさないウイルスもあります。

多くの動物種や植物種は、それぞれ独自のウイルスを持っています。

猫には猫免疫不全ウイルス(FIV)があります。これは、人間にとってエイズを引き起こすウイルスであるHIVに当たります。

コウモリは、多くの異なる種類のコロナウイルスの宿主です。

COVID-19を引き起こす新型コロナウイルスの感染源は、コウモリであると信じられています。

細菌に感染するウイルスというものもあり、バクテリオファージと呼ばれています。

細菌感染に対抗する手段として治療に使われることもあります。

ウイルスは突然変異を起こしたり、ウイルス同士が混ざり合うことがあります。

COVID-19の場合のように、変異することで種を切り替えて感染することがあるのです。

なぜウイルスの中には、命に関わるものがあるの?

人間にとって影響が大きなウイルスは、ヒトへの感染力があるウイルスです。

ヘルペスウイルスのようなウイルスのグループには、感染後長い間休眠状態にあって、悪影響を及ぼさないものもあります。

ウイルスや病原体がどれほど有害であるのかは、その病毒性から表現されることが多いです。

これは、ウイルスが感染者にどれほど害を及ぼすかだけでなく、ウイルスがどれほどうまく免疫系をかいくぐって、増殖し、他の媒介者へと広がるかにもよります。

進化の側面から見ると、ウイルスの広がりと感染者の症状の重さにはトレードオフの関係があることが多いです。

バカみたいに増殖して感染者をすぐに殺してしまうようなウイルスは、新たな感染者に広がる機会を減らしてしまうでしょう。

一方、ゆっくり増殖して、症状も軽いウイルスには感染を広げるための時間がたっぷりあります。

ウイルスはどのように広がるの?

ウイルスに感染すると、感染者の体はウイルス粒子の貯蔵庫となり、せきやくしゃみによって体液を介して外に放出されます。また、皮膚と一緒に剥離したり、触ったものに付着する場合もあります。

ウイルス粒子は、最終的には新たな感染者へと行き着く場合もあり、非生物へと行き着く場合もあります。

そういった汚染された物体は、感染の媒介物として病気の拡散に重要な役割を果たします。

コロナウイルスって何?

COVID-19を引き起こす新型コロナウイルス(SARS-CoV2)は、ウイルスの科であるコロナウイルス科に属しています。

名前の由来は、ウイルス粒子を顕微鏡で見た時の見た目にあります。

粒子の表面にタンパク質が突出していて、太陽のコロナのように見えるからです。

他のコロナウイルスとしては、2003年に中国で発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因となったものや、2012年に中東で発生した中東呼吸器症候群(MERS)のものがあります。

コロナウイルスは比較的突然変異を起こしやすいので、ヒトへの感染力を持つに至ることも多いのでしょう。

参考記事: The Conversation

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