万能細胞であるiPS細胞はいろんな細胞から作ることができますが、114歳という高齢の女性から採った幹細胞をiPS細胞にすることに今回始めて成功しました
iPS細胞の提供者としては最も高齢となります。
更にその細胞は老化をリセットした若返りの証拠を示していたのです。
超長生きのスーパーセンテナリアンとは?
世界でも110歳を超える高齢者は、現在28人しかおらず「スーパーセンテナリアン」と呼ばれています。
100歳以上を「百寿者(センテナリアン)」と呼びますが、スーパーセンテナリアンになれる高齢者はその中でも1000人に一人しかいません。
スーパーセンテナリアンが長生きなのは、ゆっくり年を取るためだけではなく、高齢者特有の病気に対して特別な耐性を持つためであることがわかっています。
こういったスーパーセンテナリアンからiPS細胞を作って研究できれば、長寿の秘密がわかったり、アルツハイマーやパーキンソン病の治療に役立つ可能性があります。
万能性をもつiPS細胞は若返った細胞
iPS細胞と言えば、ノーベル医学賞を受賞した山中教授で有名ですが、細胞に遺伝子操作を加えることで初期段階にリセットして万能性を回復させたものです。
生物の体にある細胞は、全て幹細胞から分裂してできます。
それぞれの組織にはそれぞれ専門の幹細胞があるのですが、それらの幹細胞のどれにでもなれるのが万能細胞です。
自然に存在する万能細胞として知られているのは、初期胚に存在する胚性幹細胞です。
iPS細胞は、大人になった細胞を胚性幹細胞にまで若返らせたものと考えることもできるでしょう。
114歳から採取した細胞がiPS細胞として若返る!
これまで、iPS細胞を作れる年齢に上限があるのかどうかはわかっておらず、100歳を超える老人の細胞からは作れないと、先行研究の結果から考えられていました。
「Biochemical and Biophysical Research Communications」に掲載された新たな論文では、スーパーセンテナリアンの女性と、43歳の健康な成人、そして早く年をとってしまう病気を持った8歳の子供から血液を採取してその中に含まれるリンパ芽球からiPS細胞が作られました。
その結果、スーパーセンテナリアンのiPS細胞を作るのにさしたる困難もないことがわかり、そのうえ、染色体のテロメアが若者のレベルにまで長くなっていることがわかりました。
テロメアというのは染色体DNAの端の配列を保護するための領域で、DNAが複製され年を取るにつれて短くなり、老化の指標とも考えられています。
テロメアがなくなってしまうと、遺伝子情報が染色体の端の方から破壊されてしまいます。
テロメアのリセットは大人の細胞ではほとんど起こることはありません。著者らによると、今回達成できたことは114歳の細胞を0歳にまで戻したことと同等であるといいます。
スーパーセンテナリアンのiPS細胞を使って長寿の秘訣を探る!
iPS細胞へのプログラムの書き換えに必要な因子はたった4つです。
なので、出来上がったiPS細胞を調べる際に障害となる人工的な操作の痕跡は小さくなります。
また、作られたiPS細胞からは間葉系幹細胞を分化することに成功しており、万能性を有していることが確認されています。
スーパーセンテナリアンのiPS細胞から組織や臓器を分化させて研究することで、長生きの秘訣がわかることでしょう。
その際の比較対象として健康な成人と、早老症の子供のiPS細胞が役にたちます。
年齢は細胞を若返らせる際の障壁にはならないことがわかりました。さらなる研究で長寿の秘密が明らかになることを期待しましょう。
参考記事: Science Alert
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