科学者たちはどうやってDNA配列を読み取っているの?

DNA わかる!科学

DNA(デオキシリボ核酸)には、身体を維持するのに必要なすべての情報が書き込まれています。しかし、その構造はとてもシンプルです。

DNAは4種類の化学物質の構成成分が、いろんな配置で並ぶことで作られています。この配列はあなたの体に関する取扱説明書となっています。塩基と呼ばれる構成成分は、アデニン、チミン、グアニン、シトシンの4種類で、普通は単にA、T、G、Cと呼ばれています。

DNAに書かれた情報は、遺伝子と呼ばれる単位でまとまっています。遺伝子は取扱説明書に書かれた一つの文のようなものです。

遺伝子の多くが、髪の毛の伸長や食べ物の消化、酸素の循環といった、日々の身体の維持をつかさどっています。なので、DNA配列の99.9%は全人類で全く同じです。残りの異なる部分があなたの個性を生み出しています。たとえば、あなたの目が青いとすれば、茶色の目の人と、いくつかの遺伝子上の文字がほんの少し違っていることになります。

私達が成長するとき、私達の細胞は分裂します。一つの細胞が二つになるのです。細胞が分裂するとき、新しくできる細胞には、DNAの完全なコピーがそれぞれの細胞で新しく必要になります。DNAにはこの複製を簡単にする構造があります。二本鎖になっているのです。細胞が分裂するとき、鎖が分裂し、それぞれの鎖で新たな二本鎖が作られるのです。では、それがどのようにして起こるのかを見ていきましょう。

片方の鎖にAという文字があれば、その対になる鎖には必ずTという文字があります。GのときはCがその対となります。なので、ある短いDNA断片は次の図のようになります。

DNA断片

Credit:Mark Lorch

では、分裂中の細胞での片方の鎖を見てみましょう。最初のAに対応するTがまずくっつきます。

DNA複製その1

Credit: Mark Lorch

次に、Tに対応するAがくっつきます。

DNA複製その2

Credit: Mark Lorch

次に、CがGの反対に入ります。

DNA複製その3

Credit: Mark Lorch

このようにして、DNAの新しい二本鎖が完成するまで続きます。

DNAを読む

DNA複製のこの方法を利用すれば、DNAの配列を読むことができます。

そのために、科学者たちは読みたいDNAを4本の試験管に分けます。そして、試験管に細胞がDNAを複製するために使っている仕組みをすべて加えた上で、多くの追加のA、T、G、Cを加えます。

次に、配列上で次の文字とくっつくことができなくなるように加工されたDNAの塩基を加えます。わかりやすくイメージするために、レゴブロックを思い浮かべてください。そのブロックの頭にはくっつくためのポッチがなくなっていて他のブロックと頭でくっつくことができません。これらの特別な文字をA*、T*、G*、C*と表記します。

4つの試験管にはそれぞれ、特別なDNAの文字が加えられます。1つ目にはA*を、2つ目にはT*を、3つ目にはG*を、4つ目にはC*を加えます。

それではA*が加えられた1つ目の試験管で、DNA配列がどうなるのかを見ていきましょう。

最初は、上記でみたように、最初の文字Aに対応するTが加わります。

DNAシーケンスその1

Credit: Mark Lorch

でも、次は図のようにA*が付け加えられるかもしれません。

DNAシーケンスその2

Credit: Mark Lorch

すると、次の文字はA*とくっつくことができません。なので、この鎖の伸長はこの長さで止まります。

しかし、試験管には他にも多くのDNAと文字があるので、ここに通常のAが加わることもあり、そうなると次にCが二つ続いて次のようになります。

DNAシーケンスその3

Credit: Mark Lorch

次の文字では2つの選択肢があります。もしA*がくっつけば、次のようになるでしょう。

DNAシーケンスその4

Credit: Mark Lorch

このように、Aが加わる必要がある場合にはいつも、A*が代わりに加わり、DNAの伸長を止めてしまう可能性があります。なので、最終的には次のように複数のDNA鎖が得られることになります。

DNAシーケンスその5

Credit: Mark Lorch

DNAを読んでいる科学者には、鎖の最後がA*で終わっていることがわかっています。次に、それぞれの鎖の長さがどれくらいなのかを数えます。そうすることで、2番めと5番目、8番目の文字がすべてAであることがわかるのです。

全く同じことを他の試験管でも行うと、1つ目と6つ目がTであること、3番めと4番目と9番目がCであること、7番目がGであることがわかります。これらをまとめることで、すべてのDNA配列を読むことができるのです。

DNA配列を読むことは役に立ちます。というのも、ときに遺伝子上の文字が、説明書のタイプミスのように間違っていることがあるからです。そうすると、細胞での働きがおかしくなることがあるのです。

例えば、ある遺伝子の配列情報がたった1文字違っただけで、齢をとったときに糖尿病やがんにかかりやすくなったりということがあるのです。DNAの情報を読むことで、その人が手遅れになる前に、病気を見つけて治療をすることができるのです。

DNA配列を読むための方法は、DNAの複製時に使われている仕組みを上手く利用したものでした。実際には、DNAの伸長を止めるための特別な文字に、蛍光色素をつけて見分けられるようにするといった工夫が更に行われていて、読み取り用の機械も日々進化しています。

参考記事: The Conversation

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