脳をコンピュータに繋いで操作!切開せずに脳内に電極を作る方法

テクノロジー

ブレイン・マシン・インターフェイスによって、麻痺を持つひとは、コンピュータで文字を書くことが可能になります。ただ、脳に電極を埋め込む手術は、患者に多くのリスクを背負わせることになります。新たに開発された、ステントロード(ステント電極)は、手術の際、頭を切開することなく、血管を通じて埋め込むことが出来ます。開発したのは、Synchron社で、現在臨床試験の段階まで進んでいます。

ステントロードって何?

ステントロードの原理は、一般のステントを電極にしたものと考えると良いでしょう。ステントは、血管など管状の器官の狭窄した場所を内側から押し広げる器具です。金属のワイヤーで出来たチューブ状の網というのが、一番良く見られる形です。内側から広げるという特質から、手術の際にほとんど切開せずに済みます。このステントを電極代わりにして、信号を集めるリード線がついたものがステントロードです

臨床実験が始まろうとしている

Synchron社のステントロードは、機材の有効性と安全性を動物実験で確認する段階をクリアしています。臨床試験の認可も得られたことで、現在、麻痺を持った患者から臨床試験の参加者を募っています。5人の口または手に麻痺があり、コミュニケーションを取るのが難しくなっている患者が、すでにステントロードを埋め込むことが決まっています。患者たちは、脳卒中やALS、神経損傷などが原因で麻痺を患っています。

切開手術をしなくてもブレイン・マシン・インターフェイスを作れる技術ということで、大きな可能性を持った技術ではあるのですが、開発しているSynchron社はことを急いではいません。

臨床試験に当たる前に、患者たちは脳スキャンを受けました。神経学者から、その患者にとってステントロードの埋込みが本当に有益であるのか評価され、ステントを埋め込む血管に手術に適さない障害が無いか、調べられています。

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

埋め込みが終われば、患者たちは装置を使って、考えることでコンピュータ装置にテキストを打ち込むトレーニングが開始されます。目標は、スマホでテキストを打ち込むスピードに達することです

プライバシーは守られるの?

ブレイン・マシン・インターフェイスを埋め込むということは、脳活動のデータを医師が24時間365日得られることを意味します。これらのデータの医学的な価値は計り知れないものがあります。しかし、Synchron社は、これらのデータをのぞき見して、データマイニングにかけることなどは計画していないといいます。あくまでも、麻痺を患った方の助けになることが目的なのです。プライバシーを守るため、将来別の目的で、データを渡すことは無いとしています

将来の可能性

しかし、将来の研究を全く閉じているわけではありません。ブレイン・マシン・インターフェイスは、コミュニケーションを助けることだけに、その能力は限定されていません。技術が発展することで、もっと多くの応用が可能となるはずです。麻痺をもった患者が望んでいることは、再び動けるようになることでしょう。ステントロードの信号伝達のスピードが十分に早いとすれば、ロボット義肢や、外骨格装置のコントロールができるかもしれません。考えるだけで、まるで手足のようにそれらを操作できる可能性があるのです。

攻殻機動隊の世界が実現しそうな技術です。当面は障害者のコミュニケーション補助の目的で使われそうですが、将来的には健常者が能力拡大のために埋め込むことにもなるかもしれません。コンピュータやロボットの操作が意のままになるというのは楽しそうだし、仕事の効率も上がりそうですが、軍事や犯罪、極度な管理社会などでも使いうる技術ではあります。楽しみな技術ではありますが、実際に普及するためには、もっと議論がなされる必要があるでしょう。

参考記事: Futurism

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