ついに発見!?恐竜を滅ぼした隕石衝突時の大災害の様子がはっきりわかる地層

サイエンスニュース

6600万年前、地球に巨大な隕石がメキシコ付近に衝突し、恐竜を含む当時の生命をほとんど一掃する大破壊が起こりました。しかし、当時の地層は薄く大量絶滅を示す化石も見つかっていないため、大量絶滅の原因については疑問も残っています。しかし、新たに科学誌「PNAS」に、隕石衝突当時の様子がはっきりと保存された地層の発掘結果が報告されました。巨大な津波によって陸へと打ち上げられた魚が湖の淡水魚や、地上で焦げたソテツ類とともに、隕石衝突で巻き上がった特殊なガラス粒を含む堆積物で短期間のうちに埋められたのです。

恐竜を絶滅させた隕石衝突

隕石の落下で出来たと思われるクレーターが、メキシコのユカタン半島に残っています。チクシュルーブ・クレーターと呼ばれるその地域では、地磁気の異常や重力異常、セノーテと呼ばれる陥没穴の分布が見られます。直径は160kmもあり、世界でも3番めに大きなクレーターです。

隕石の衝突時のエネルギーは、広島型原爆の10億倍。衝突によって起きた地震はマグニチュード11以上で、引き起こされた津波は高さ300mにもなったと考えられています。衝突の起きた時期の地層はK-Pg境界と呼ばれており、白亜紀が新生代古第三紀へと移行する時期を示しています。隕石に多量に存在するイリジウムや、衝突時の噴出物に高温で解けたガラス質が小さな粒になったテクタイトがこれらの層でみつかっていることから、隕石の衝突が起きたのがこの時期であることは証明されています。

ノースダコタでの大発見

発掘された場所は、衝突地点から何千キロも離れたアメリカノースダコタにある、農場の一角です。土地を所有するオーナーが、フロリダ、パームビーチ自然史博物館の古生物学専門研究員ロバート・A・デ・パルマ氏に奇妙な化石の多い地層の発掘を依頼したのです。デ・パルマ氏は、最初はこの地域に存在した湖の、周期的な季節変化を明らかにしようと考えて、発掘に望んだのですが、そのアイディアはすぐに消えました。

隕石衝突直後の地層

この地域のK-Pg境界の地層は厚く、中にはたくさんの生物や植物の化石が、素晴らしい保存状態で残っていました。死んでから腐敗や崩壊するよりも前に堆積物におおわれたからだと考えられます。当時陸地だったこの場所で海の魚の化石がたくさん見つかり、その魚のエラにはたくさんのテクタイトが詰め込まれていました。まるで呼吸するときに吸い込んでしまったかのようです。テクタイトは地殻のガラス質が隕石の衝突による高温で溶けて空中に飛散し、小さなガラスビーズとなって空から大量に陸地に降り注いだものです。発掘された50%の魚のエラにテクタイトが見つかっています。

Credit: Robert DePalma/ University of Kansas

同じ地層に、チョウザメや、1.8メートルのヘラチョウザメが、鱗に損傷がないのに体が引き裂かれて埋まっていました。海の軟体動物、木の葉っぱや、シュロの葉、焦げた木の幹も見つかっています。津波で海の生き物も湖の淡水生物も陸地へと打ち上げられて、一緒に空から降り注ぐ噴出物や、押し流された堆積物によって短時間で埋まっていったのです。

また、地層には隕石に多く含まれるイリジウムが見つかっています。以上の発見すべてが、隕石衝突直後に起こった一連の大災害を表しています。

さらなる続報にも期待

今回発表された論文は、隕石衝突によって起こった大災害の時期や地質学をはっきりさせることが目的だといいます。実は、論文ではまだ発表されていない、多くの発見が実はまだたくさんあるようなのです。たとえば、この地層に恐竜の化石や、孵化したての恐竜の卵があり、大災害当時恐竜が栄えていたことなどです。今後発表されると思われるデ・パルマ氏の発見に期待がかかります。

参考記事: The New York Times

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