NASAの探査機ガリレオが木星の衛星であるエウロパに数回フライバイしたのが、1995年から2003年の間です。その時の観測によって、この衛星の厚い氷の層の下には、液体の海が存在する証拠が示されています。研究者たちはこの海に、微生物が住み着いている、あるいは、かつて住みついていたと信じています。
生命を探す場所としては、厚い氷の下の海が岩石質の層と交わるところで意見が一致しており、そこには生物の原料となる有機物質があるはずです。問題は、そこからどうやってサンプルを回収するかです。
外殻の氷の厚さは、2kmから30kmと予測されており、着陸船が突破すべき大きな障壁となっています。
この問題の解決策を提示したのが、シカゴのイリノイ大学地球惑星環境科学准教授アンドリュー・ドンバードと共同研究者たちです。アメリカ地球物理連合の年会でその解決策、「核エネルギー駆動形穴掘りプローブ」を発表しています。
NASAのGlenn Research COMPASSチームは、多分野を横断した科学者や技術者が協力して、宇宙探索や科学ミッションのための技術や解決法を考え出す使命を持っており、イリノイ大学のグループもこれに協力しています。
グループが行ったのは、核エネルギー駆動の「トンネルボット」の概念研究で、このボットは、氷の外殻に侵入してエウロパの海まで到達し、搭載した装置や測定器によって、現存あるいは死滅した生物の痕跡を探ることができます。ボットはまた、氷の外殻そのものが生存可能地帯であるかを評価することもできます。
ボットは、氷の外殻や氷と水の境界からサンプルを回収し、氷の下に微生物によるバイオフィルムが存在するかどうかを確認します。ボットはまた、氷の層の中にあるかもしれない湖を発見する能力も持ちます。
研究者たちが考えたデザインは2通りあります。1つは小型の原子炉で動くもので、もう一つは宇宙探索のためにデザインされた放射線による熱源モジュールである、「多目的熱源ブロック」をエネルギー源にしたものです。これらの動力源から得られる熱を使って氷の外殻を溶かすのです。外部との通信は、「リピーター」と呼ばれるボットにつながった光ファイバーのケーブルが使われます。
NASAはこういった概念研究に研究費を出して、どういった技術が惑星探査に必要なのかをテストしています。今回発表されたボットが使われるかはわかりませんが、エウロパが生命の存在を探る場所として非常に有力であることは確かです。
エウロパの氷の厚さは尋常ではありませんが、冷めない核の熱で溶かしながら進むというのは良いアイディアです。果たして氷の下に生物は存在するのでしょうか?今後、調査が行われることを期待して待ちましょう。
参考記事: Phys.org
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