私達の住む天の川銀河の中心付近に、外部から衝突して一体となった銀河の名残である化石銀河が新たに発見されました。
銀河は銀河同士衝突や融合をすることで、様々に進化していくことがわかっていますが、私達の天の川銀河も他の銀河と衝突して進化してきました。
今回の発見は、APOGEEと呼ばれる観測実験のデータから見つかりました。
研究は、「Monthly Notices of theRoyal Astronomical Society」で発表され、天の川銀河の進化を解明する上での大きな要素の一つとなるでしょう。
この化石銀河が天の川銀河に衝突したのはおよそ100億年前であると見積もられますが、当時天の川銀河もまだ幼い時期でした。
化石銀河は「ヘラクレス」と名付けられましたが、これは、天の川ができた際に不死の能力を授かったギリシャ神話の英雄にちなんでいます。
ヘラクレスは、天の川銀河の球状ハローの3分の1を占めるほどの大きさがあります。
これほどの大きさがありながら、今まで発見されていなかったのは、銀河の中心深くに存在していたためです。
今回の発見のために、星の化学組成や動きの細かいデータが利用されています。
発見が難しかったのは、銀河の中心付近は星間物質の雲で視界が遮られているからですが、APOGEEでは赤外線を観察することで雲の中まで見通すことができたのです。
10年を超える稼働時間の中で、APOGEEは銀河系内の50万もの星のスペクトラムデータを集めることができており、その中には塵で覆われた中心部のものも含まれていました。
この莫大な数のデータから、組成や動きの異なる化石銀河の星を見つけるのは、干し草の山の中から針を見つけるようなものだと、筆頭著者の大学院生ダニー・ホルタさんは述べています。
データを確認した数万の星の中で化学組成や動きが異なるものは、2〜3百ほどだったそうです。
しかし、それらの組成の違いは明らかで、他の銀河から来たものでなければ説明できないものでした。
これらの星を更に詳しく調べた結果、化石銀河の正確な位置と、その経歴を知ることができたのです。
銀河は小さな銀河の融合によってできているので、古い銀河の残骸は銀河の外側のハローに散らばる事が多くなります。
天の川銀河は中心から外に向けて形成されたので、初期の融合を見つけるためには、銀河ハローの中心部を探す必要があったのですが、それは円盤やバルジの深いところに埋もれていたのです。
ヘラクレスに属していた星が、現在の銀河のハローの3分の1を占めているということは、この古い化石銀河の衝突は銀河の歴史の中でも主要なイベントであったということになります。
つまり、このことが示唆しているのは、私達の天の川銀河は他の大きな渦巻銀河と比べても特別なものである可能性があるということです。
私達が住んでおり、生物がいることが確定しているという点で、すでに特別な天の川銀河なのですが、形成の初期に他の銀河と衝突して活発になっていたという点でも特別なものであるようです。
参考記事: Phys.org
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