ハーバード大学とブラックホールイニシアチブ(BHI)の科学者たちが、太陽系外縁に存在するブラックホールを見つける方法を開発しました。未知の第9惑星がブラックホールであるならば見つかる可能性があります。
仮説上の太陽系惑星であるプラネット・ナインは、太陽系の外縁を回る天体の軌道に偏りがあることから、そのバランサーとして存在が予測されている大質量の惑星です。
未だに観測されていないことから、その正体については様々な説がありますが、その中に、ビックバン直後にできた原始ブラックホールであるとするものがあります。
通常のブラックホールは大質量の恒星が重力崩壊して形成されるため、その質量が惑星程度ということはありません。
しかし、原始ブラックホールはビックバン直後にできた重力崩壊を引き起こしうる高密度環境で生まれるため、その質量が惑星並みの小さなブラックホールになる可能性があります。
ただ、原始ブラックホールの存在も仮説上のものであり、観測例はまだありません。
今回、「The Astrophysical Journal Letters」に受諾された論文の方法を使えば、予定されているレガシーサーベイオブスペースアンドタイム(LSST)ミッションによって、太陽系外縁に原始ブラックホールを発見できるかもしれません。
太陽系外縁に存在する大質量天体といえば、プラネット・ナインでしょう。
もし、発見できればプラネット・ナインの正体がわかり、原始ブラックホールも現実のものとして認められるわけです。
この、太陽系外縁でブラックホールを見つける新しい方法ですが、それは、ブラックホールに飲み込まれる彗星が崩壊時に放つフレアを観測することで行われます。
太陽系外縁にはオールトの雲と呼ばれる領域があって、たくさんの彗星の卵が存在すると考えられています。
原始ブラックホールがこのオールトの雲を通過する軌道を回っているとすると、小さな彗星がブラックホールに衝突することになるでしょう。
ブラックホールのまわりには降着円盤ができているので、その中でできる摩擦熱で高温となっています。
なので、ブラックホールに近づいた彗星は高温で溶けた上で、ブラックホールによる強い潮汐力を受け潮汐崩壊します。
そのさいブラックホールによって質量が消費されて降着フレアと呼ばれる電磁放射が起こるのです。
もちろんブラックホールからは電磁波さえも逃げ出すことはできないのですが、事象の地平線の外で起きる現象は観測可能です。
LSSTには、この降着フレアを観測できるだけの能力があります。現在稼働している望遠鏡でも、観測は可能ですが、存在する場所がわからない天体でいつ起こるかもわからない現象を観測することは事実上不可能です。
LSSTの視野は広く、週に2回の全天サーベイを何度も行えるため、一時的な現象である降着フレアが見つかる可能性が高くなります。
もし、LSSTによってプラネット・ナインが存在すると考えられる領域に、原始ブラックホールが見つかったとすれば、それは、原始ブラックホールの発見、プラネット・ナインの発見、オールトの雲の発見と、大きな発見が一度にもたらされることになります。
また、ブラックホールが太陽系の近くに存在することがわかれば、その研究も進むでしょう。
SF的ですが、ブラックホールを利用したテクノロジーも開発されたりするかもしれません。タイムマシンとかワープドライブとか。
今後の発見に期待です!
参考記事: Phys.Org
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