原子の内部はほとんど空っぽなのに、どうして物体を見たり触ったりできるの?

わかる!科学

最初に原子を提唱したのはドルトンです。それ以来、物質が原子から出来ていることに、科学者に異論はありません。原子は陽子と中性子からなる、中心となっている原子核と、その周りに殻のように存在する電子で出来ています。

テーブルが有ると想像してください。そのテーブルを十億倍に拡大したとすると、原子の大きさはおよそメロンくらいになります。その中心の原子核となると小さすぎて見えません。電子ともなると更に小さいのですが、原子核の周りをダンスしています。中身はほとんどスカッスカなのに、どうして私達の指はテーブルを通り抜けず、また光もその隙間を通り抜けてしまわないのでしょうか?

それを説明するためには、電子について見ていく必要があります。残念ながら、私達が学校で習ったことは単純化されすぎています。実は、電子は地球が太陽の周りを回るような感じで、原子核の周りをぐるぐる回っているわけではないのです。かわりに、電子はハチや鳥の群れのようなものだと考えてください。個々の電子は早すぎて見えないのですが、群れ全体の形は見ることができるのです

電子のダンス

実際電子は踊っています。他にうまい例えは無いのでそう表現されます。そのダンスはメチャクチャなものではありません。むしろ舞踏会でのダンスのようで、その動き方にはパターンがあります。そのステップの刻み方は、エルヴィン・シュレディンガーが考案した、数学的な波動関数に従っています。

そのパターンには種類があって、あるものはワルツのようにゆっくりで穏やかであり、あるものはチャールストンのように、速くて活発です。それぞれの電子は同じステップを踏み続けますが、ときには他のパターンに変わることがあります。しかし、変化できるのは他の電子がそのパターンを取ってない時に限ります。原子内の2つの電子が同じステップを踏むことは無いのです。この法則を、排他原理といいます。

電子は疲れ知らずですが、ステップを早くするにはエネルギーを得ることが必要です。逆に電子がゆっくりのパターンに落ち着く時には、エネルギーを放出しなければなりません。光はエネルギーを持っていて、電子に与えることが出来ます。光からエネルギーを吸収することで、速いダンスパターンへ変化できるのです。光がテーブルに当たると、すべての原子内の電子が光が持つエネルギーを奪い取ろうとするため、光がテーブルの深いところにまで通過することはありません。

非常に短時間で、吸収したエネルギーは失われますが、その時再び光になります。吸収したり反射した光のパターンの変化が、照り返しや色を与えることで、テーブルが見えるようになっているのです。

触ったときの抵抗

では、テーブルを触った時の硬い感触はどのように生まれるのでしょう?このように説明されることがあります。電子の持つ負の電荷同士が反発するためであるというのです。しかし、この説明は間違っています。簡単に信じてはいけません。硬い感触は電子のダンスからもたらされています

テーブルを触った時、あなたの指の原子にある電子は、テーブルの原子の電子に近づきます。一方の原子内の電子が、もう一方の原子の原子核に十分近づくと、電子のダンスパターンが変化します。なぜなら、一方の原子内で低いエネルギーで安定している電子は、もう一方の原子に対して同じように振る舞えないからです。というのも、もう一方の原子のエネルギーの低い空いたポジションは電子で埋められているからです外から来た電子は、まだ空いているよりエネルギーの高いポジションに入るしかありません。そのためにはエネルギーが供給されなければなりませんが、今回は光による供給ではなく、あなたが指にかけている力そのものがエネルギーになります

2つの原子を近づけるにはエネルギーが必要です。それは、まだ占められていないエネルギーの高い状態に電子が入る必要があるからです。テーブルのすべての原子と指の原子をくっつけるためには非常にたくさんのエネルギーが必要となり、あなたの筋力では足りないのです。その時感じる抵抗によって、テーブルが硬いということがわかるのです。

参考記事: Universal-Sci

コメント