世界に一つしかない私たちの指紋はどのようにしてできたの?

指紋 わかる!科学

指紋は、遺伝子が全く同じである一卵性双生児でも同じものを持ちません。遺伝子以外の要因が働いて、違った形になるのです。指紋は胎児の頃にはもうできていて、老人になってもその形は変わりません

指紋とは指先にある小さな隆起がつくる模様です。本質的には、表皮と呼ばれる皮膚の最も外側の層が折りたたまれたものです。

スマホなどの表面に残される指紋は、線状の隆起上の皮脂や垢によって作られる模様となります。

指紋の作られ方

指紋はあなたが生まれる前から作られ始めます。

胎児が成長してまもなくは、皮膚の最も外側の層はつるつるしています。

しかし、10週間もたつと、基底層と呼ばれる皮膚の深い層が、外側の層よりも早い成長を見せ、「バックル」と呼ばれる折りたたみを作ります。

成長した基底層は、皮膚の下部でくしゃくしゃになって束状に折りたたまれるのです。

この折りたたみが、皮膚の表面の層にも隆起をもたらします。それが、17週たった胎児に最初の指紋を与えます。

この折りたたまれる様子には、法則性がないように思えますが、全体の大きさや指紋の形は、両親から引き継いだ遺伝子の影響を受けています。なので、家族とは似たような指紋の模様を共有してるかもしれません。

しかし、指紋の模様の細かい部分は遺伝子以外の他の要因によって左右されます。

例えば、皮膚の中の血管の大きさや形、皮膚の層の成長スピードの違い、羊水中の化学物質環境などが重要な働きをします

そのため、全く同じ指紋を持つ人は、一卵性双生児同士でもいません。

指紋が生涯に渡って変わらないことが、大規模で長期に渡る研究で明らかになったのは2015年になってからです。

指紋の線に当たる隆起は、皮膚の最も外の層にあるのですが、そのパターンは深い層に保存されています。

指先に怪我を負った場合でも、皮膚の上層が回復すると模様も復活します。傷跡ができていたとしてもです。

なので、あなたの指紋は完全にあなただけもものであり、それは生まれる前からできているのです。どれだけ成長してあなたが変わったとしても、どれだけ長生きしたとしても、今持っているのと変わらない指紋であり続けます。

指紋はなんのためにあるの?

驚いたことに、指紋がなんのためにあるのかはわかっていません。

長い間、指紋はものをつかみやすくするための摩擦を作り出していると考えられてきました。

この考えは理にかなっているように思えます。というのも、ヒト以外の生き物で指紋を持っているのは、霊長類の類人猿や猿、コアラなど、木に登って生活する生き物たちだからです。

しかし、理にかなっていることがいつも真実であるとは限りません。最近の研究では、指紋によってものがつかみやすくなってはいないことが示されています。少なくとも、つるつるした表面を持つためには役に立ちません。

他の可能性としては、指紋によってものを触ったときの感度を上げているという説や、ケガから守っているという説があります。しかし、それが正しいかどうか、科学者にもわかりません。

指紋の利用法

指紋

Photo credit: cogdogblog on Visualhunt / CC BY

警察は指紋を犯人を捕まえるために使用していて、その利用は2000年前の中国にまでさかのぼります。

現在では指紋の利用はそれだけにとどまりません。人によって異なるという性質から様々に利用されています。

例えば、スマホのロックを解除したり、制限された場所の入り口の鍵を開けるのに使われます。

マラウィでは、お金を貸し出した農家の身元を確認するために指紋が使われています。また、赤ちゃんからも指紋を採取し予防接種の記録を見るときのために使われています。

警察も指紋の新たな利用法を探しています。指紋の検出や解析法が改善されたため、指紋によって、ある石を誰が投げたのかまでわかるようになりました。

また、指紋の小さな隆起の間には、極小の化学物質が隠れていることもあります。つまり、コカインやヘロインといった違法麻薬の使用を検出するのにも使えるのです。

今では、法科学者は何十年も前の指紋を検出できるようになっています。色の変化する化学物質を使って、指紋の中の汗腺の場所を描き出せる様になったのです。刑事たちが古い犯罪を解決する手助けとなるでしょう。

参考記事: The Conversation

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