クモの巣は何でできていて、それはどれくらい強いの?

クモの巣 わかる!科学

クモの巣はクモの糸でできています。クモの糸は英語ではシルク(silk)。カイコのマユでできた絹もシルクと言います

虫の作る繊維のことをまとめてシルクというわけです。このシルクは、タンパク質と呼ばれる化学物質でできています。

タンパク質は、生物によって作られる特別な化学物質です。人間も多くのたんぱく質からできています。DNA上の遺伝子の情報は、タンパク質の並びの情報です。タンパク質は体内で非常に多様な働きを持っていて、生物を形作る物質の中でも主役といっていい存在です。

タンパク質のあるものは、くっついてさらに大きなものを作ります。髪や爪といったものも、ケラチンと呼ばれるタンパク質で出来てるんですよ!

クモ

Photo credit: iansand on Visual Hunt / CC BY-NC-ND

昆虫やクモは糸であるシルクを作るための特別な紡績腺と呼ばれる器官をもっています。そして、足を使って紡績腺から糸を引き出します。

多くの種類のクモが2種類以上の紡績腺を持っています。それぞれ、強さと伸縮性が異なっていて、用途に合わせて使い分けています。あるものはクモの巣の基盤をつくり、粘着力のあるものや、卵を保護するための糸もあります。糸の強度と伸縮性は、クモの体内で糸のタンパク質がどのように配置されるかによって決まります。

クモは非常に強い糸を紡ぐように進化しました。しかし、クモの巣の強さは、実際に触ったときにわかるわけではありません。それは、クモの糸が非常に細いからです。最も強い部類の女郎蜘蛛のクモの糸は、鋼よりも強く、50分の1の重さしかありません。鋼の4倍の強度を持つクモの糸もあります。

クモの糸は、ちょうど鋼鉄とゴムをかけ合わせたような性質を持っています。複雑な機械や化学物質を使って解き明かそうとしても、これほど強くて伸縮性があり、しかも軽い物質の作り方はわかっていません。クモが作る糸だけが、未だにこの分野におけるチャンピオンなのです。

クモの糸の仲間と人工のクモの糸

シルクと呼ばれる糸を作れるのは、クモとカイコだけであると多くの人は考えていますが、実際には20種類もの異なった部類の虫がシルクを作れることを知っていましたか?

シルクを作れる虫には、コオロギ、シミ、グローワーム、アリ、ミツバチ、スズメバチ、ハエ、イモムシ、クサカゲロウ、ハバチの幼虫などがあります。

これらの中には、身を守るためにシルクを作っているものがいます。例えばコオロギは、シルクを使って葉っぱを縫い合わせて巣を作ります。他にも、オドリバエのようにメスを惹きつけるために使うものもいます。贈り物の餌をシルクで包んで、メスの気を引くのです。また、クモやグローワームは餌を狩るのに糸を使います。粘り気のある糸で飛んでいる餌を捕まえるのです。

人工的なクモの糸を作る試みもなされていて、成功に近づいています。日本の企業であるスパイバー社は、クモの糸を人工的に合成して量産化することに成功しています。その繊維を使って「MOON PARKA」というジャケットをノースフェイスブランドで作り、商品化に成功しているのです。

生物の生み出す物質であるタンパク質でできたクモの糸。高い強度と伸縮性があって軽く、並びによってその調節が可能であるため応用範囲は広いです。将来色んな場面で見かけるようになるかもしれませんね。

参考記事: The Conversation

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