どうして人間のような知性を進化させた生物が他にはいないの?

ネコ わかる!科学

人間も他の動物も、同じ環境で同じ進化の仕組みを通じて進化してきました。なのに、人間のように知性を進化させた生物は他にはいません。なぜでしょうか?

人間は他の動物とは違った進化をとげました。体の大きさに見合わない、他の動物と比べても大きな脳を持っており、他の動物とはレベルの異なる知性を持っています。

計画する能力や、協力、新しい技術を創造し、うまくいくものについての情報を共有する能力といった知性には多くの利点があります。

動物の特徴、例えば、トラの縞模様や蝶の鮮やかな色、人間の大きな脳といったものを生物が進化させてきた理由は、それらの特徴には、生存における優位性があるからです。こういった優位性を持った動物は子孫にその特徴を受け継がせます。

人間の知性の起源については多くの仮説がたてられています。紹介するのはその中の一つで、生物文化的再生産(biocultural reproduction)と呼ばれるものです。

大きな脳を持つことで、ヒトは他の動物よりも多くの赤ちゃんを生きたまま育てることができます。生物文化的再生産仮説によると、知性がどのように赤ちゃんを生き延びさせるかは、どのように私達がお互いを助け合うか、特に子どもたちの面倒を見るのかによっています。

互いを助け合う

ミーアキャット

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大小の社会集団で生活する多くの動物や、鳥や哺乳類で社会生活をするミーアキャットのような種は、赤ちゃんへのエサの供給や保護において互いに助け合います。ヘルパーと呼ばれる個体には自分自身の赤ちゃんはいません。自分自身の繁殖をあきらめて、母親や姉のような支配的な家族を助けます。

人間の場合は違います。赤ちゃんが欲しくて、それができる人なら誰でも持つことができます。自分の赤ちゃんの面倒を見るのは、両親だけでなく、他人の子供の面倒を見るということもよく行われます。

両親や他の世話人は若者のために多くの年月を費やし、時にはそれが一生に渡ることもあります。おとなになった子孫を助けることも、孫の世話をすることもあります。こういった助けのことを、科学者たちは生物文化的再生産と呼びます。

世話人は世話を焼く子供の血縁者であることもあれば、そうでない場合もあります。お互いを世話し合う方法についての規則は、遺伝子には刻まれておらず、私達がお互いを呼び合う名前に刻まれています。その名前は、サミやバリーといったような名前ではなく、「娘」、「おばさん」、「祖父」、「いとこ」、や「友達」といった名前です。

こういった名前を使うには、象徴的言語が必要になります。つまり、私達が呼び合うそういった名前には、どのように他人を扱えばいいのかといった概念が含まれています。ただ人間やその祖先だけが、こういった象徴的なコミュニケーションを進化させたのです。

友達のことを「姉妹」や「兄弟」、「いとこ」と呼んだりすることもあるかもしれません。多くの人間社会において、若者は、遺伝的に関係のない大人のことを、「おじさん」や「おばさん」と呼ぶことがあります。ある宗教の指導者の中には、「ファザー」や「マザー」、「シスター」と呼ばれる人もいます。これらの名前は、敬意を表す印として使われ、こういった人々と、私達のつながりについての情報を付与します。

大きな脳が必要

家族

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こういった人々への名前付けというのは複雑です。すべての名前を覚えたり、家族や友達との関わりについての生活史を覚えておくには、大きな脳による知性が必要です。

私達と遺伝的に近いチンパンジーのような種は、私達の脳の大きさの3分の1しかありません。彼らは象徴言語を使わず、名前で呼び合ったりもしません。チンパンジーの母親は自分の赤ちゃんの面倒は見ますが、他のチンパンジーの助けは、父親や祖父母からもありません。チンパンジーの赤ちゃんで大人にまで成長するのはたったの3分の1です。

一方、幅広く世話をする人がいること、例えば食事や病気の世話、教育やお金や愛情の提供があることは、人間の赤ちゃんが生き延びて栄えやすくなっていることを意味します。大きな脳による知性は、お互いの世話をする助けとなり、人口が80億人にまで達しようとしていることの理由を説明してくれているのです。

参考記事: The Conversation

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