【コロナ変異株】南アで見つかった変異数の多い「オミクロン株」危険性については評価中

ウイルス サイエンスニュース

南アフリカで最初に見つかったコロナウイルスの変異株が、イスラエルやベルギーといった他の国にも広がってきており、ヨーロッパやアジア、北アメリカでは緊急の渡航制限が相次いでいます。

このオミクロン株と呼ばれる新型変異株は、かなりの数の変異を持っていて、専門家によると、デルタ株に比べて、感染力が高まり、重症化しやすい傾向を持つ可能性があるといいます。

世界保健機構(WHO)は、金曜日にこの変異体について、「懸念のある変異株」(VOC)として、オミクロン株と命名し、デルタ株などと同様、各国の保健機関が精査する必要のある変異体として指定されました。

検証段階の証拠ではありますが、他のVOCに比べて、再感染のリスクが高い可能性が、WHOから報告されています。

しかし、オミクロン株の脅威についての研究はまだ始まったばかりです。世界中で報告されているこの変異株のゲノム配列の報告数は100程度で、デルタ株の280万に比べて、圧倒的に少ないのです。

「この変異株についてはまだ良くわかっていません」とWHOのCOVID-19に関するテックリードのマリア・ヴァン・ケルクホブさんは言います。「わかっていることは、この変異株が多くの変異を持っていることで、懸念されるのは、これほど多くの変異を持つ場合、ウイルスの挙動に多大なインパクトを与える可能性があることです。」

さらに、「この変異体にどのような影響がもたらされたのか、理解するには2〜3週間かかります」と続けました。

多くの科学者たちは、もっと早く答えが得られるように望んでいますと、テキサス大学ヒューストン医療科学センター公衆衛生校の疫学者キャサリン・ジェテリナさんは述べており、他にも世界でまだ見つかっていないだけで、変異株が潜伏している可能性を上げています。

「もし、アメリカにすでに上陸していたとしても、私は驚きません。この変異株がすでにトルコやエジプト、ベルギー、イスラエルのような国へと感染を広げているのを見ているからです。」

オミクロン株には新種の見慣れない変異が含まれている

南アフリカの研究者たちが最初にオミクロン株を見つけたのは、11月9日で、11月24日にWHOへこの変異株を報告しています。科学者たちは、この変異体を探り当てたのが初期段階であったことを期待していますが、それは、見つかった変異株の症例の多くが、南アフリカに集中しているからです。

「南アフリカは世界でも有数のゲノム監視システムを持っており、コロナウイルスの鑑定を絶えず行っていることは皆の知るところです。その研究者たちが、南アフリカで、今までにたった100の症例しか見つけていないということは、感染拡大の初期段階であるという希望があります」とジェテリナさんは述べています。

しかし、多くの指標が、オミクロン株が他のコロナウイルス変異株に比べても高い感染力を持つことを示唆しています。その一つは、南アフリカのコロナウイルス感染症の症例数が、過去2〜3週間で急激に増えていることです。ジョン・ホプキンス大学のデータによると、一日の平均症例数は、最初にオミクロン株が見つかった11月9日から比較すると13倍も増えていて、一日あたり275件だったのが3700件にまで増えているのです。

オミクロン株はまた、デルタ株やアルファ株といった他の懸念される変異株の持つ厄介な変異も持っていて、高い感染力やワクチン効果の低下、重症化を引き起こす可能性があります。

また、この新たな変異株は、いくつかの見慣れない変異も持っています。

「情報のない多くの変異があります。今までの懸念のある変異株には見られなかったものです。なので、最初の疑問は、これらは何であるのか?であり、また、私達は、この変異について恐れる必要があるのかということです」と、ジェテリナさんは言います。

現在までに、この変異株のスパイクタンパク質には32の変異が見つかっています。スパイクタンパク質とは、ウイルスの表面にあるコブ状の突出で、ウイルスが細胞内部に侵入するのを助けます。他の名前のついた変異株で見られるスパイクタンパク質では変異はもっと少なくなっています。

「スパイクタンパク質は、感染するために私達の細胞に侵入する鍵となります。なので、このタンパク質での変化は良いものであれ悪いものであれ、本当に注意を払わなければなりません。今南アフリカで見られている症例数の増加を生み出しているのは、おそらくこれです。」

公衆衛生の専門家「まだ慌てる必要はない」

突然変異が多いということは、必ずしも変異株を凶暴にし感染力を高めるものではないし、それだけで、オミクロン株が他の変異株よりもワクチンへの脅威が高まることを示唆してもいません。

「この新たな変異株がデルタ株よりも脅威になるかどうかはまだわかりません。また、これによりワクチンが効かなくなるかどうかもまだわかりません。」

科学者たちはまだ、感染によって自然についたものであれ、ワクチンによるものであれ、コロナウイルスに対する抗体がオミクロン株に対してよく効くのかどうか、確認するための実験室での研究を待っている状態です。また、どれだけ早くこの変異株が世界中に広がるのかを注意深く観察しています。特に、ワクチンの接種率が高い国においてです。(南アフリカのワクチンの完全接種率はたった24%です。アメリカでは59%、日本は76%です)

「これがどのような展開になるのか、次に私達はどう動くのか、しっかりと見ておく必要があります。」

モデルナ社、バイオンテック/ファイザー社、ジョンソン&ジョンソン社はみな、彼らのワクチンがオミクロン株に対して有効かどうかをテストしていると述べています。

ワクチン接種を終えて、屋内の公共の場でマスクをしている人たちは、その行動をすぐに変えなければならないと感じる必要はありませんと、ジェテリナさんは言います。

WHOの健康危機プログラムの執行役員であるマイク・ライアン氏も同様のメッセージをシェアしています。

「ウイルスは進化し、私達は変異体を取り上げます。これは世界の終わりでもなければ、空が落ちてくるわけでも有りません。待っていれば次の変異株は現れるものであるというだけで、みなさんには毎日このことを心配して生きて欲しくはありません。」

参考記事: Business Insider

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