高温超伝導の高温記録が更新!−23℃を達成

温度計 サイエンスニュース

高温超伝導の記録が一般冷凍庫程度の温度にまであがりました

マックスプランク研究所とシカゴ大学を中心とする共同研究チームが、高温超伝導の達成温度をさらに高めることに成功しました。超伝導とは、電気の伝導性が100%になる物質の状態で、電気のロスが全くなくなるため、室温で達成できれば応用範囲は広いです。研究は、「Nature」で発表されています。

研究チームは、最新技術を使って、ある超伝導物質について−23℃付近での超伝導を観察しています。これは、以前の記録を50℃も引き上げるという快挙です。高温で超伝導を記録した材料には、高い圧力がかけられてはいたのですが、室温での超伝導を達成するという目標に向けた大きな一歩となりました。

超伝導と高温超伝導

超伝導には2つの主要な特性があります。一つは、電流に対する抵抗がゼロになるというものです。もう一つは、磁場が侵入できなくなり、内部の磁場がゼロになるというものです。これらの特徴から、幅広い応用が考えられています。電気ロスが全く発生しない電線や、超高速コンピュータ、磁気浮遊リニアモーターカーなどです。

しかし、超伝導を達成するためには、一般に超伝導体を絶対零度に近い、かなりの低温にまで冷やす必要があります。そして、-248℃以上の高い温度で超伝導を達成することを高温超伝導と呼んでいます。今回の研究以前に達成されていた高温超伝導は、−73℃でした。このような低温状態を作るにはコストがかかるので、超伝導の応用範囲は限定されているのです。

高圧をかけた水素化ランタンによる高温超伝導

最近の理論研究によって、超伝導体の水素化物が更に高い温度での超伝導を達成できることが予測されていました。マックスプランク研究所の研究者が、その物質の一つ、超水素化ランタンを作ってその超伝導性をテストしました。そして、その構造と組成を解明したのです。

超伝導体の構造

Credit: Drozdov et al.

この物質の欠点は、超伝導を達成するのに極めて高い圧力をかけなければならないことです。その圧力は150〜170ギガパスカル。地表にかかる気圧の50万倍という圧力です。ほんの数ミクロンの試料をダイヤモンドで挟んでこの圧力をかけることで、超伝導温度−23℃という新記録を達成しています。

超伝導と判断するために満たすべき特性は4つあるのですが、そのうち3つをこの材料は達成しています。一つは電気抵抗の低下で、もう一つは外部磁場の存在下での必要温度の低下、そして、元素の放射性同位体への変更による温度の変化です。今回観測できなかった特性は、マイスナー効果と呼ばれるもので、磁性体が超伝導物質の上に浮く効果と言われればピンとくる人も多いでしょう。観察できなかった原因は、作られた試料が極めて小さかったからだと考えられます。

一般の冷凍庫でも頑張れば下げられる温度であり、地球上でも気候によっては自然に達成できる温度で、高温超伝導が達成されたことは大きな前進です。ただ、超伝導を達成するためにかけた圧力が高すぎるため、このままでは応用出来ないでしょう。温度を室温にまで上げ、圧力を下げるために研究は続きます。常温常圧超伝導が達成できれば、未来の景色はガラリと変わるでしょう。研究がんばって!

参考記事: Phys.org

 

 

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