非営利団体惑星協会(プラネタリー・ソサエティ)が7月31日に、ソーラーセイルである「ライトセイル2」のミッション成功を公式に発表しました
ソーラーセイルというのは、燃料を一切使わずに光からエネルギーを受けて進む宇宙推進システムです。風ではなく光を受けて走る帆船といったところです。日本の実験機、「イカロス」が有名ですが、今回の「ライトセイル2」は、惑星協会が資金をクラウドファンディングで集めて作った、食パン一斤ほどの大きさの小型衛星です。
その成功をCEOであるビル・ナイがプレスカンファレンスで発表しました。
We are officially declaring MISSION SUCCESS for our crowdfunded @exploreplanets #LightSail2 spacecraft! We did it people(s)! pic.twitter.com/vshsMTxHwL
— Bill Nye (@BillNye) July 31, 2019
ライトセイル2ソーラセイル展開が成功したのは1週間前ですが、その後ミッション管理者が、遠隔で宇宙船の方向を最適化しました。この小さな変化によって、宇宙船は地球上の軌道を上の方向へと上りはじめ、軌道の最高点が上昇しました。ミッションチームはこの軌道の上昇が、太陽から放射された光を乗せた光子による推進力にほかならず、ソーラーセイルの成功以外に説明がつかないことを確認しています。
この成功によって、ライトセイル2は地球軌道上でソーラーセイルに成功した最初の宇宙船であると同時に、ソーラーセイルで推進した最初の小型宇宙船となりました。そして、ソーラーセイルで推進した宇宙船としては、「イカロス」についで2番めの成功となります。
ライトセイル2が打ち上げられたのは6月25日のことです。NASAのケネディ宇宙センターからスペースX社のファルコンヘビーロケットによって打ち上げられました。他の人工衛星に便乗し、最終的にはその人工衛星から射出されています。7月2日には地球の低軌道に到達成功したことを示すシグナルが、この5kgのキューブサットから送られて来ました。7月23日には、宇宙船はソーラーセイルの展開に成功し、初期のデータから小型モーターが回転してセイルを太陽の方向へと向け始めていることが確認されました。その動きによって軌道を1周回るたびに、太陽からさらなる圧力を受けやすくなりました。現在までに、地球の画像や展開したソーラーセイルを撮って地上へと送信しています。
ライトセイル2の目的は、ソーラーセイルの有効性を証明することです。光子は質量を持ちませんが、小さな運動量を伝えることができます。なので、太陽から放射された光子が宇宙船にぶつかると、宇宙船はほんのわずかですが、太陽から遠ざかります。力は小さくても連続的に絶え間なく加速度が加わって行くため、長期間では大きな推力となりえます。地球上にいる私達に光子が当たった場合も同じことが起こるのですが、その力は小さすぎるため事実上なんの影響もありません。
ライトセイル2に備わったソーラーセイルは、超薄型で鏡のような薄膜で、光子がぶつかると宇宙船を前へと動かします。この技術を使う最大のメリットは、ソーラーセイル宇宙船は燃料を搭載する必要がなく、そのため理論的にはより長い期間航行することができ、燃料の再充填の必要もないということです。
つまり、ソーラーセイル宇宙船の開発をすすめることで、宇宙船を現在到達できる点よりももっと遠くまで届けることができ、遠くの宇宙へと生命を探しに行くことも可能となるはずです。太陽系内の未知の領域から、太陽系外まで今まで到達できなかった場所にまで行くことができるのです。しかもその際に、燃料の心配をする必要がないのです。
ライトセイル2の現状の確認はウェブサイト、LightSail2 Mission Controlでできます。
参考記事: Space.com
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