マスクで防ごう!無症状感染者が感染を拡大する!【COVID19】

サイエンスニュース

新型コロナウイルスの非感染者がマスクをしても予防の観点からあまり意味がないとして推奨されていなかったのが、ここに来て推奨されるように変わってきています。理由は無症状の感染者でも感染力を持つことがわかってきたからです。

新型コロナウイルス(SARS-CoV2)による感染症COVID19が世界中で猛威をふるい、本日4月6日の時点で確認された感染者は100万人を有に超え、今後もその数が増えていくのは確実です。

ここまで拡大した理由を科学者たちは探していますが、その一つが、症状のある患者の4分の1程度いる無症状の感染者が感染力をもつことであると、CDCは考えています。

そのため、症状のない人もマスクをすることでウイルス拡散の潜在的危険性を小さくし、感染拡大を抑制できると考えているのです。

症状がなくてもマスクをする習慣のあるアジアの国々で、感染が比較的抑えられているのは、案外そういう理由かもしれません。

Lockdown

congerdesignによるPixabayからの画像

世界の国々で都市封鎖(ロックダウン)が行われていますが、それはSARS-CoV2の広まりが目に見えないところで起こっているからです。

感染経路が、症状の強く出ている感染者からだけであれば、その患者を隔離することで広がりを抑えることができます。SARSやMARSの場合はそうやって抑え込むことができました。

しかし、新型コロナウイルスの場合、症状が出ないままで感染力を持った感染者が存在し、本人も気づかないまま感染を拡大させてしまっているようなのです。

症状が出ない感染者はもちろん検査を受けないわけですから、感染者の数として表に出てきません。そのため、どれほどの感染者が存在しているのか、本当のところはわかっていないのです。

症状の出ない感染者と前発症伝染

無症状者による感染が最初に確認されたのは2月です。

武漢の20代の女性が新型コロナウイルスにかかり、5人の家族にうつしてしまいました。

しかし、本人には何ら身体的な症状は出なかったのです

WHOの研究では、中国での調査から、無症状者のうち75%が後に発症したことがわかっています。

無症状な感染者の例や、前発症伝染が確認された例として次のようなものがあります。

  • 2月に武漢から日本へ退避してきた人たちの調査で、陽性だった人のうち31%が無症状だった。
  • シンガポールでの新型コロナウイルスの調査では、157例が国内での感染であり、そのうち10例が発症前伝染だった。研究者たちの結論によると、発症前の感染者が感染力を持ち始めるのは、症状が出る1日から3日前である
  • 2月時点で行われた中国での研究では、468件の症例のうち13%が前発症伝染だった。
  • ロサンゼルス・タイムズによると、60人のコーラスグループの練習中にCOVID19のウイルスに感染した団員は4分の3にものぼったが、練習当時症状が出ていた人はいなかった。

前発症伝染の感染力は最高レベル

SARS-COV2

Photo credit: NIAID on Visualhunt / CC BY

発症前感染者からの感染で特に問題となるのが、感染の初期段階で多くのウイルスをばらまいてしまうことでしょう。

潜伏期間の平均が5日であることも問題を難しくしています。発症して感染がわかるまでの間、知らずにウイルスをばらまくことになるからです。

香港にある2つの病院で、23人のCOVID19患者のウイルス量が調べられました

ウイルス量とは感染者がどれくらいのウイルス粒子を持っていて、それを環境内にどれだけ放出しているかを調べたものです。

その結果、ウイルス量のピークは発症した最初の週にあり、それから徐々に減っていきました。

一方SARSでは、目に見える症状が出てから7日から10日後に放出量がピークを迎えます。

広州で行われた研究でも同様の結果が出ています。

94人の感染者を調べた結果、感染力が最も強いのは症状が現れ始める時か、その直前でした。

子供が無症状の媒介者になる可能性

子供

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無症状の媒介者のグループとして注目しなければならないのは子どもたちかもしれません。

いまのところ、子どもたちにおいては新型コロナウイルスで重症化することは多くありません。しかし、緩やかに感染してウイルスを撒き散らすことはありえます。

中国の病院で、1月17日から3月1日の間に新型コロナウイルスに陽性だった子どもたち36人を対象とした研究が発表されました

半分の子どもたちが、病気としては弱く症状もないと記されています。

査読前の論文ですが、中国でCOVID19にかかった子どもたち700人のうち56%があったとしても弱い症状しか示さないことがわかっています。

ピッツバーグ大学医療センターの専門家ジョン・ウィリアムズはABCに対して、無症状感染は子供では一般的であり、10−30%の症例でおこっていると述べています。

前発症伝染を防ぐにはマスクが有効かも

今までWHOもCDCも、健康な一般人が人前に出るときにマスクを付けることは推奨していませんでした。

ただ、医療関係者にだけ、マスクなどで顔を守る防護処置が必要であるとしていました。

しかし、ここに来てCDCのガイダンスに沿って、ホワイトハウスがアメリカ人に対して外に出回るときにマスクを着用することを求める政策が予想されています。

その最も有力な理由が、前発症伝染の流行を防ぐことでしょう。

くしゃみも咳もしていない元気に見える人が感染を引き起こす可能性があるわけです。

防ぐためにはあらゆる人がマスクをしなければならないでしょう。

マスクには着用者が感染するのを防ぐ能力はありません。

ウイルスはマスクのフィルターの穴よりも小さいのです。

しかし、感染者の口や鼻から飛びだすウイルス入りの飛沫を抑えることはできます。

マスクを着けるのは、自分が感染しないためではなく、周りに感染を広げないためなのです。

参考記事: Business Insider

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