2019年3月2日、民間宇宙企業スペースXが、ISSへ宇宙飛行士を送る有人宇宙船クルードラゴンのテストフライトを行いました。その処女飛行では、白く輝くボディが空を駆け上がってく様子が見られました。国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキングも見事成功。そして、3月8日にはパラシュートを開いて、無事に帰還を遂げました。帰還は、大西洋のフロリダ沖で行われました。4つの巨大なパラシュートが花咲き、ゆっくりとスムーズに着水しています。ISSへ向かう6日間のテスト飛行は無事成功に終わり、民間宇宙船による有人宇宙探検の新たな幕開けとなりました。しかし、帰還したそのボディはもはや純白ではありませんでした。
ISSから分離したとき、そのボディは澄んだ白でした。しかし、再突入時の加熱を経験したあとは違っています。
「打ち上げを見ていた方であれば、ドラゴン宇宙船の表面にある防熱システムがきれいな白であることに気づかれたかもしれませんね」と述べているのは、スペースXのエンジニアであるケイト・タイスです。「もちろん地球の大気に再突入したわけですから、プラズマが発生しています。なので、回収船には、現在かわいらしい焼きマシュマロが乗っているのです。地球へと帰還した証拠を見られるのは本当にクールなことです。」
タイス女史が引き合いに出しているのは、大気圏突入時に宇宙船を襲った、焼けるように熱い超高熱ガスのプラズマです。他の帰還を目的としたすべての宇宙船同様、スペースXのクルードラゴンも、熱を正面から受けて耐えられるように、基部に耐熱シールドを持っています。ですが、側部の白い耐熱層は、まるで調理されたようです。しかし、それは予測されていたことです。
実際、イーロン・マスク氏はクルードラゴンの焦げ跡がついている場所は、最も高温だった場所でさえ無いと言っています。高熱だったのは底にあるメインの熱シールドで、見事に高温に耐え抜いています。
「時速27000で大気に突入するのは、隕石のようなもので、鋼も蒸発するだろう」と、マスク氏は焼け焦げたクルードラゴンの写真とともにツイートしています。「焦げ跡は温度の低い側にあります。主要な熱シールドは底です。」
Atmospheric entry at 17,000 mph is like a meteor & will vaporize steel. Burn marks below are on cold side. Main heatshield on bottom. https://t.co/GRs7j751R4
— Elon Musk (@elonmusk) March 8, 2019
スペースXは、海上ドローンに着陸した回収されたファルコン9ロケットにも同様の焦げ跡を見つけています。貨物宇宙船のカーゴドラゴンも、再突入で加熱された跡が残っています。回収された一号機は、カリフォルニアのロケット工場内に吊り下げられています。
スペースXが、NASAのコマーシャル・クルー・プログラムの元、宇宙飛行士を運ぶために作った最初の宇宙船、それが、クルードラゴンです。今回の飛行はデモ1と呼ばれていて、実際の宇宙飛行士を乗せても大丈夫なのかを確かめるための、無人テストミッションでした。デモ1において、クルードラゴンには、マネキン宇宙飛行士「リプリー」が乗っていました。宇宙飛行士が宇宙船内でどのような体験をするのかを記録していたのです。
スペースXのクルードラゴンに加えて、今年、NASAはボーイング社が作っているCST-100スターライナーによる宇宙飛行士の飛行計画ももっています。4月に無人のテスト飛行が行われる予定となっています。スペースX社もボーイング社も、実際の宇宙飛行士を宇宙へ送る前に、無人試験で飛行時の脱出システムを成功させる必要があります。
クルードラゴンの真っ白なボディは未来的で、今までにないカッコいい宇宙船ですが、大気圏突入後には焼きマシュマロになっちゃうみたいです。残念な見た目にも見えますが、激闘を生き抜いた勇者の傷跡ととらえると、カッコ良くも見えてきます。民間企業が宇宙飛行士を輸送する、新しい時代がせまってきています。宇宙開発の未来は明るそうです。
参考記事: Space.com
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