毒ヘビは自分の毒で死んだりしないの?

毒蛇 わかる!科学

毒ヘビは獲物を噛んで毒を注入して殺すか動きを止めてから捕食します。毒ヘビは毒を持っているわけですが、仲間の蛇から噛まれた時に、死んでしまうことはないのでしょうか?

結論から言えば、同じ種類の毒ヘビから噛まれた場合、毒による影響を受けることはありません。実際、同種のヘビから噛まれる可能性は高く、戦ったり交尾したりするときに噛まれます。一方、違う種類の毒ヘビに噛まれた場合は、影響を受ける可能性があります。

自分の毒で死なない理由は、毒ヘビが自分の持つ毒に対する免疫を進化させたからです。というのも、つがいやライバルから噛まれる機会がたくさんあるので、対抗手段を進化させないと絶滅してしまうからです。

しかし、他の種類の毒ヘビから、頻繁に噛まれるヘビというのは実際にはいません。なので、他の種類の毒ヘビの毒に対して免疫を発達させる機会はなかったのです

毒ヘビは胃の中で毒を分解できる

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Photo credit: wwarby on Visual Hunt / CC BY

多くの人が、毒ヘビが自分の毒に免疫があるのは、毒を注入された獲物を食べた時にその毒で中毒を起こさないためだと信じています。

しかし、この場合、免疫は必要ではないことが分かっています。多くの脊椎動物の胃の中に、ヘビ毒を速やかに分解する特別な分解用の分子が発見されているのです。なので、ヘビの胃の中でも獲物の内部にある毒は速やかに処分されるため、ヘビの体内で毒が悪さをする時間はないのです。

毒ヘビをペットで飼っている人たちはこのことをよく観察しています。例えば、一匹の毒ヘビが餌であるマウスを噛んで毒を注入したとします。その死んだマウスを取り出して、他のヘビに与えたとしても、そのヘビが毒で死ぬことはありません。

英語で毒を表す、”venom”と”poison”、”toxin”の違い

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Photo on Visual Hunt

科学者たちはヘビの毒の話をするときには、”poison”よりも”venom”を良く使います。ところが、多くの人たちが、この2つの毒表す単語を混同して使っています。”poison”は食べられたり飲み込まれたりすることで害をなす毒のことです。一方、”venom”の方は噛まれたり刺されたちする事で体内に注入されることで害をなすものです

また、“toxin”というのは、生物が生み出す毒素そのものを表しています。”toxin”は”venom”にも”poison”にも含まれているということですね。

多くの毒ヘビは獲物を噛んで毒を注入するため、その毒は”venom”です。しかし、ある種の数少ない毒ヘビの中には、毒ガエルを食べてその毒を蓄えるものがいます。こういった毒ヘビは食べられた時に、捕食者に対して有毒となります。こういった毒ヘビは”venomous”ではなく、”poisonous”です。捕食者はこういった”poisonous”なヘビを食べると危険であることを学習するため、この種類のヘビは食べられることがなくなります。

まとめると、毒ヘビは仲間に噛まれて毒を注入されても死ぬことは無いし、自分の毒を獲物と一緒に飲み込んでも全く平気です。毒という強力な武器を使いこなすには、それによって自滅しない能力も一緒に進化させる必要があったというわけですね。

参考記事: The Conversation

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