制御を失うことなく生み出せる最大エネルギーはどれくらい?

エネルギー わかる!科学

科学が発展し、原子力を利用することで大きなエネルギーを得ることができます。平和利用のために制御された状態で、このエネルギーを取り出す場合、どれくらいのエネルギーを得ることができるのでしょうか。核融合は実現するの?

私達の頭上には、自然が生み出した強力なエネルギー源があります。太陽です。太陽から地球までの距離は1億5千万キロなので、地球に届く太陽のエネルギーは、全エネルギーのうち十億分の1にすぎないのですが、それだけのエネルギーで地球上に生命を繁栄させました。太陽から地表に降り注いでいるエネルギーの1秒分は、なんと、2018年に世界中の発電所が生み出した全エネルギーよりも多いのです。

地球上で、人類が機械を動かすために注いでいるのは、集めてきたエネルギーによるものがほとんどです。例えば、水が落下するエネルギーを集めることで、電気に変えるのが、水力発電です。エネルギーを生み出すためには、物質をエネルギーに変換しなければなりません。

連鎖反応

これを行う一つの方法は、宇宙に存在するすべての物質を構成している基本単位である原子を分裂させることです。それを制御できる形で行えば、エネルギーを安定した流れとして生み出せます。制御を失うと、核爆発として大量なエネルギーのすべてを、一度に放出することになります。

すべての原子の中心には、さらに小さな粒子である、陽子と中性子でできた原子核があります。原子核を維持している力には、巨大なエネルギーが蓄積されています。原子核からエネルギーを抽出するために、科学者たちは重たい原子を軽い原子に分裂させる方法を考え出しました。軽い原子核の維持には、重たい原子核を維持するよりも少ないエネルギーで十分であるため、エネルギーが熱や光として放出されます。この方法は核分裂と呼ばれています。

一つの原子が核分裂すると、連鎖反応が始まります。原子の分裂は、ほかの原子の分裂の引き金となり、その連鎖が続きます。連鎖反応を制御可能にするため、科学者たちは、分裂した粒子を吸収するようなものを使って、分裂の速度を抑える方法を開発しました。

原子力

mini Springfield nuclear power plant

原子力発電所は、制御の下で、分裂した原子が放出するエネルギーを集めます。世界最大の原子力発電所は、日本の柏崎刈羽原子力発電所です。7基の原子炉を持ち、8000メガワットの発電能力があります。単独の原子炉で世界最大のものは、中国の泰山原子力発電所の2基の原子炉です。それぞれの原子炉が、1750メガワットの発電能力を持ちます。

この程度のパワーは、核爆弾などの制御されていない核反応に比べるとずっと小さなものとなります。現代の核爆弾の爆発が生み出すエネルギーは、柏崎刈羽原子力発電所が半年で発電するエネルギー量と同等です。

核分裂の欠点は、核廃棄物にあります。分裂した原子は通常不安定であり、危険な放射線を放出します。核廃棄物は長年の間、適切な方法で保管される必要があります。

近くて遠い核融合

太陽

ipicgrによるPixabayからの画像

科学者たちは、核廃棄物をともなわずエネルギーを生み出せる、別の形の核反応も発見しています。2つの軽い原子を組み合わせて1つの重たい原子を生み出すときに、失われた質量がエネルギーへと変換されます。この方法を、核融合と呼びます。核融合は、太陽の中心で起こっている反応です。一秒間で、太陽は、6億トンの水素を5億9600万トンのヘリウムへと融合し、そのエネルギーは数兆発の原子爆弾と同等です。

しかし、地球上で核融合を達成するのはとても大変です。核融合は、太陽で見られるような超高温高圧という極限状態でしか起きません。科学者たちは、いまだに消費したエネルギー以上のエネルギーを生み出す、効率的な制御できる核融合を実証できていません。しかし、その実現のために頑張っています。一つの方法は、水素の放射性同位体の小さな一点に異なる方向から高出力レーザーを集中させることです。

核融合エネルギーは、将来有望なエネルギー解決策となりそうです。しかし、忘れてはならないのが、私達は頭上に巨大な核融合炉・太陽があるということです。太陽エネルギーの利用効率を高めることによって、自分たちでエネルギーを生み出す必要もなく、ただ、日々太陽が提供してくれるものをより多く集めればいいのです。

太陽のすごさを考えると、核融合が実現できれば一度に生み出せるエネルギーの上限は上がるでしょう。エネルギー問題だけ考えると、その素晴らしい太陽を効率よく利用できれば、あらゆる環境問題も同時に解決できて素晴らしいですね。太陽光パネル生産時の環境負荷をさげることと、エネルギー変換効率を高めることが目下の課題でしょうか。それ以上のブレイクスルーが太陽光利用促進のためには必要かも。

参考記事: The Conversation

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