統合失調症の症状に感情の平板化というものがあります。健康な人に比べて感情の起伏がなくなるのです。バンダービルト大学の研究で作られたカラフルな図からは、人々が感情をどのように体で感じているのかがわかります。しかし、統合失調症患者から作られた図ではその現れ方が根本的に異なっていました。研究は「Schizophrenia Bulletin」で発表されています。
研究では、被験者に感情を身体的にどの部分で感じているのかを記した、「ボディマップ」を作ってもらいました。そして、作ったボディマップを統合失調症患者と比較したのです。ボディマップはコンピュータによって色による視覚化が行われ、怒りや抑うつなどの感情を感じている身体の部位の分布や強さが示されました。
結果はグループ間で根本的に異なっており、健康な人たちでは、13の異なる感情の感じ方は明確な分布で示されており、感情に応じて興奮の高まりや、力が抜ける部位に明確なパターンが現れました。しかし、統合失調症の患者では全ての感情において、全身的な身体的感覚の減少で現わされていました。
また、統合失調症患者においては、感情の違いによってボディマップが変わることがないこともわかりました。このことは、統合失調症患者が自分の感情の特定や認識、言語化に問題があることを示しており、また、他者の感情を理解しようとする際にも問題になる可能性があることも示されています。
この発見は、統合失調症患者が感情にうまく対処し、対人関係を改善するように助ける際のうまい方法を開発する助けとなるでしょう。今回の結果が重要なのは、統合失調症患者が他者との関わりに問題を示す理由がより深くわかったことです。統合失調症患者に身体から引き起こされる感覚に注意を払うように助け、感情に対処するためにそれを利用するように助けることができるようになったのです。
今回の研究は、参加者の自己申告による身体的な感じ方の言語化です。そのため、統合失調症患者が本当に、感情を感じていないとは言えません。ただ、気づいていないために言語化できないだけなのかもしれません。なので、感情に意識を集中して気づき、言語化する訓練をすれば、健康な人たちと同等に感じれるようになる可能性があります。そうなれば、他者の感情にも気づき人間関係のトラブルを減らせるようになるでしょう。
参考記事: EurekAlert
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