脳スキャンによって、意識の在り処が判明

サイエンスニュース

意識を生み出している脳の状態とはどのようなものなのでしょうか?研究者たちが、健康な人たちと周囲からの刺激に反応しない人たちの脳を解析することで、意識の発しているサインを発見しました。研究は、「Science Advances」で発表され、コミュニケーションを取れない患者の意識を正確に計測する方法が示されています。

これまでにも、意識をはかる方法は提唱されていましたが、今回の研究は規模が大きく、研究法が洗練されていたため、意識の強力なサインを発見することに成功しています。研究は4カ国に及ぶ協力の元行われました。リード大学の認知神経学者ミカエル・ピットは、「今回の研究は、意識の臨床的神経科学に直接関わる結果として、明確で信頼の置けるものです」と述べています。

意識と、脳が意識を生み出す方法は、とらえどころがない概念です。眠っている時には失われ、薬剤で歪められたり、事故によって失われたりします。

研究者たちは、意識がどのように生み出されるのかを確認するための実験を多く提案してきましたが、今までにはっきりと突き止められたことはありませんでした。
意識の脳内におけるはっきりしたサインを発見したことで、意識がどのようなものであるのか、理解する手がかりがえられました。

2種類の意識の活動パターンを画像解析で発見

パリのINSERMのヤコボ・シットと共同研究者たちは、脳の活動を調べるために機能的MRI(fMRI)を使ってデータを取りました。fMRIでは脳内で酸素が消費された場所を画像で特定できます。酸素が消費された部分では神経活動が活発になることが知られているため、間接的に神経活動を知ることができるのです。

研究に参加したのは125人で、そのうち47人が健康な人たちでした。残りは、目が開いていても意識の痕跡が見られない無反応覚醒症候群の人たちと、指示に従って目を動かすといったシンプルな意識のみが見られる、意識状態が低下した人たちです。

データを詳しく調べた結果、2つの明確な脳活動が現れてきました一つ目は、正反対の部分で示される複雑なパターンを特徴とするものです。ある神経部位が活発な時に、別の部位の活動が抑えられるというパターンを取ります。この複雑なパターンは、脳の解剖学的な部位とは関係していませんでした。信号の往復は、解剖学的な結合とは離れて起こっていました。

2つ目のパターンは、もっと単純で脳の解剖学的な部位と密接に関係していました。意識が完全に現れている人たちの脳は、複雑な方のパターンを多くの時間示していました。無反応覚醒症候群の人たちは、単純なパターンを多く示しており、意識状態の低下した人たちは、この2つのパターンが様々に組み合わされて示されました。

○複雑なパターンを示す脳活性は、意識がある状態で多く現れる
○解剖学的な部位とリンクする単純なパターンは、意識がない状態で多く現れる

研究者たちは、意識はあるのにコミュニケーションが取れない、11人の患者たちにこれらのシグナルが見られないか、確かめました。その結果、周囲に気づいており意識のある患者たちが、複雑な脳機能シグナルを多く呈していることがわかりました。さらに、他の23人の患者を麻酔にかけた場合、複雑なシグナルを示す時間が減ることがわかりました。つまり、この複雑なシグナルが意識と関わっていることが示されたのです。

人々が、この2つの脳の状態を時々切り替えていることにも研究者たちは気づきました。健康な人たちの脳でも、時々、単純なシグナル状態に落ち込むことがあり、おそらくその時、一時的に「意識が飛んだ」状態になっているものと思われます。
そして、意識のない患者でも時々複雑なシグナルパターンを示すことがあります。そのパターンを示している時、患者に一時的な意識の回復が見られているのかは、研究者にもわかっていません。もし、意識が戻っているとすれば、コミュニケーションを取るための意識の窓が一時的に開かれていることになります。

意識を明確に示す脳内シグナルが明らかになったことで、意識というものがなんであるのかを解明するきっかけがもたらされました。意識は、ある解剖学的な単一の部位にあるというよりも、もっと全般的に現れるものなのかもしれません。今回発見された、意識のシグナルによって、植物状態でも意識のある人を見分けられるようになるでしょう。

参考記事: ScienceNews

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