謎の文献「ヴォイニッチ手稿」の解読不能だった謎が学術的に解明される

ヴォイニッチ手稿の一時 考古学

ヴォイニッチ手稿の謎が解かれた!

一体全体何が書かれているのか、さっぱりわからず、幾多の研究者や暗号解読者の挑戦をことごとくはねのけていた謎の文献「ヴォイニッチ手稿」の謎を解き、その使用言語と表記法を解読することにブリストール大学の研究者が成功しました。

その書かれた目的さえも数世紀にも渡って理解されていなかったにもかかわらず、ジェラルド・チェシャ―博士が解読に要した期間はたったの2週間でした。

ヴォイニッチ手稿って何?

ヴォイニッチ手稿は、1912年にウィルフリッド・ヴォイニッチによって発見された書物で、未知の文字と表記法で書かれているため、現在までは誰も読むことに失敗していた書物です。ヴォイニッチ手稿には、文字だけでなく多数の挿絵が書かれていて解読の手がかりになると考えられていますが、世界的な暗号解読の天才でさえ、解読に失敗しています。

credit: Wikimedia

未知の言語なのか、暗号であるのか、はたまた人工的に作られた言語なのか、単なるナンセンスなのか、さっぱりわかりません。最近では人工知能による解読も試みられていますが、成功してはいないようです。

失われた言語で書かれていた!

チェシャ―博士が解読に用いたのは、水平思考と工夫だけです。それによって、書かれた言語と表記のルールを特定しました。研究成果は、査読のある正統な論文誌「Romance Studies」で発表されています。論文の中で、どのように文献の解読に成功したのかが述べられており、初期ロマンス語で書かれた唯一の文献であることが示されています

博士は解読に際して、何度もエウレカとでもいうべき瞬間を体験しており、発見したものの重要さがわかって興奮したといいます。失われた言語の文献が残っていた事実と、その出処の謎が解けたからです。ヴォイニッチ手稿はドミニコ会の尼僧によって編纂されており、その目的はアラゴンの王妃、マリア・デ・カスティーリャに参考にしてもらうことでした。

マリア・デ・カスティーリャ

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この発見が偉大であるというのは言い過ぎではなく、ロマンス語の現在に続く最も重要な発展が示されているのです。ロマンス語には現在ではポルトガル語、スペイン語、フランス語、イタリア語、ルーマニア語、カタルーニャ語、ガリシア語などが含まれます。初期ロマンス語は地中海諸国で普遍的に話されていたのですが、記述されて残っているものが無いのです。というのも、当時重要な公文書などは、ラテン語で記されていたからです。なので、初期ロマンス語は現在では失われた言語となっていたのです

左から、tozosr(うるさい)、orla la(忍耐の限界)、tolora(おバカ)、noror(悲しい)、aus(行儀の良い)、oleios(滑りやすい)と書かれている Credit: Voinich manuscript

ヴォイニッチ手稿に見られる言語の特徴

ヴォイニッチ手稿に使われている言語のアルファベットには、全く未知のものと、馴染みのあるものが混在しています。句読点はなく、いくつかの文字が句読点やアクセントの代わりに使われています。すべての文字が小文字で、二重の子音はありません。二重母音、三重母音、四重母音どころか五重母音まであり、音声学上の構成因子が省略されています。ラテン語やその省略も含まれています。

次のステップは、この知識を使って文書のすべてを翻訳し、辞書を作ることです。使用言語と表記法がわかったので、道は開けたと言えます。

暗号解読の天才でも歯が立たなかった、謎の古文書だったのですが、ついに謎が解かれてしまいました。謎であるという点でロマンを感じていたのですが、蓋を開けてみれば初期ロマンス語だったわけですね。ロマンを感じるわけです。

参考記事: Psys.Org

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