科学者によって、岩を食べて砂として排泄する新種の軟体生物が発見されました。
ファンタジー世界やゲームの中の話ではありません。実際にフィリピンの川底で、炭酸石灰岩をごちそうにしている軟体生物(二枚貝の仲間)が見つかったのです。この生物は、岩石に穴を開け、その破片をお腹におさめます。おそらく、食べた岩で餌にしているプランクトンをすりつぶすために使っているのかもしれませんが、未知の方法で岩から栄養分を摂取しているのかもしれません。ノースイースタン大学のルーベン・シップウェイらによる発見は、「Proceedings of the Royal Society B」に掲載されています。
岩食いムシはフナクイムシの一種
この新種の生物は、学名でリソレド・アバタニカ(Lithoredo abatanica)と呼ばれており、フナクイムシの一種であることが判明しています。フナクイムシは、木を食べる生物として知られているのです。歴史的にフナクイムシは船乗りに忌み嫌われてきました。というのも、港の桟橋などに穴を開けてだめにしてしまうからです。フナクイムシは貝の仲間ですが、形は水管が細長く発達していて、長い虫のように見えます。貝は口の方に2枚ついており木に穴を開けるのに使われます。腸管には共生細菌がいて、木の成分を消化する助けをしています。
フィリピンの川底に穴だらけの岩で発見
このフナクイムシの変種であるL.アバタニカの標本は、ボホール島のアバタン川で採取されました。体長は5.5mmから10.5cmまでと幅があります。体は半透明で、フナクイムシの貝殻のように尖った隆起を持つ代わりに、もっと厚くて鈍い歯のようなものに変わっています。エラが長い体に沿って伸びており、腸も通常のフナクイムシよりも長くなっています。
標本を採集したのは2016年のことで、地元の人達が川底に穴だらけの砂岩の大きな塊を見つけていたことから、川底をチェックした結果の発見となりました。論文では、このムシが新たな生態系を作る役割をしており、それによって他の水生生物たちにも益になっているのではないかと結論しています。
ミミズは土を食べますが、それでも土の中にいるバクテリアなどから栄養を摂ることを目的としています。岩に穴を開けて、その破片を摂取するような生物は聞いたことがありません。ただ穴を開けるだけなら、ニオガイなど複数の種類の貝はありますが、食べるとなると別です。岩に栄養なんてなさそうですよね。もし、岩の破片から栄養分を取り込めるとすれば、岩だらけの惑星に棲む地球外生物のヒントになるかもしれませんね。
参考記事: sky news
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