単語間の関係を結びつけて理解する能力が、4000万年前の人類が誕生するよりもはるか昔に現れていたことが、猿を使った実験でわかりました。
言語を理解する上で土台となる能力である、音のまとまりの間にある関係を理解する能力が、ヒトと祖先を同じくする、現代の類人猿や猿でも見られるという研究結果が「Science Advances」で発表されています。
言語は文からなりますが、文は各々の単語が意味を担うことでできています。
しかし、意味はまた、文の並び方である文法からもきています。
句の間の関係を認識して解釈する能力を持つことは、脳が言語を処理するために重要な働きをしています。
この能力の起源を見つけるために、研究者たちは6つの音からなる独自の言語を作って、音のまとまりからなる「文」を作り、実験をおこないました。
実験対象は人間とマーモセット、そしてチンパンジーで、「文」の構造が間違っているときに気づくことができるか確かめました。
そして、これらの霊長類が共通して著しく似た反応を示すことが確かめられました。

Biljana JovanovicによるPixabayからの画像
言語には、言葉が隣り合っていなくても、依存関係を持つ非隣接依存関係というものが知られています。
例えば、「The dog that bit the cat ran away.(そのネコを噛んだ犬が逃げた。)」という文では、ran awayという動詞句は近くにあるthe catではなく、the dogと結びつきます。
研究のために作った言語は、コンピューターで作った音を人工的な文法でつないだもので、非隣接依存関係を含みます。
Aという音は、いつもBという音と同じ文の中で起こり、構文にもとずいて理解できるようになっています。
被験者や動物は、この人工文法の並びで作られた一連の音を聞かされ、その文法が破られたときにどのような反応をするのか、観察が行われました。
動物実験では構文を覚えさせるために5時間正しい文法の音を聞かせることを1週間に渡っておこなっています。

Photo credit: riy on Visual hunt / CC BY-NC
スピーカーで、人工的な音の並びに文法の誤りを加えて聞かせたところ、チンパンジーもマーモセットも、文法が破れた時にスピーカーを2倍長く見つめました。
つまり、何かおかしいということに気づいているのです。
チンパンジーやマーモセットも人間と同様に、非隣接依存関係を理解すると同時に、破れた時に判断できる能力があったということになります。
ヒトとチンパンジーの祖先が別れたのが、500万年から600万年前であり、マーモセットと別れたのが4000万年前です。
そのため、文法上正しい単語の並びを聞き分ける能力は、4000万年前にサルと人類の祖先が分岐する時点ですでに獲得されていたことになります。
では、なぜ現在の猿たちが、コミュニケーションのために言語を使っていないのでしょうか?
それは、まだわかっていませんが、人間が認識していないだけで、猿たちが何らかの言語を使ってコミュニケーションしている可能性もあります。
危機を知らせる語彙を生まれつきもっているという猿の研究を以前紹介しましたが、言語を持ちうる潜在力を、使いこなせる能力を持ったのが人間なのかもしれませんね。
参考記事: LiveScience
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