地球が危ない?ならベーシックインカムを検討しよう!

エコノミクス

危険な水準にまで達した環境問題を社会的に解決する政策として、ユニバーサルベーシックインカムの有用性が提唱されています

人間の活動によって地球環境はどんどん変わっていき、世界中の政府が気候変動や環境破壊に警鐘を鳴らしています。この危機を回避するために、全く環境問題とは関係なさそうな、無条件ベーシックインカム(UBI)が役に立つ可能性が、「Nature Sustainability」で発表されました。

ユニバーサルベーシックインカムとは

ユニバーサルベーシックインカムとは、住民に対して無条件で生活に必要な最低限のお金を支給するという制度です。現在ベーシックインカムとしての制度を持つ国はありませんが、いくつかの国では給付による影響を調べる実験が行われています。

不本意な労働をしなくても良くなるため、ブラック企業が淘汰され、家族が増えると収入も増えることから、少子化対策にもなり、年金や生活保護などを一本化することで、年金問題も解決できるなど、現在多くの国が抱える問題を解消できる政策として注目されています。将来的には、人間の知能をも凌駕するであろう人工知能やロボットによって労働者が必要なくなくなる時代に、人々に新たな生き方を提供してくれるはずです。

悪化する環境問題

一方環境問題は、悪化の一途をたどっています。地質学上今の時代を、人新世と定義していますが、人が生み出したコンクリートは地表全体を2mmの厚さで覆うことができるほどあり、生み出されたプラスチックでもラップほどの薄さですが覆うことができます。毎年48億トンもの主要穀物を生産し、48億頭もの家畜を育てています。12億台の自動車と20億台のパソコン、76億の人口よりも多い携帯端末が地球上には存在しています。工場と農業によって、大気から取り除かれる窒素の量は、自然のプロセスで起きるものよりも多く、地球全体の気温の上昇は、次に引き起こされるはずの氷河期を先延ばしにし続けています。

現代の世界的な文化のネットワークは、安定した地球環境の上に成り立っています。では、地球規模の気候変動や環境破壊に対処するために、私達はどのような国家的、国際的政策を計画すればよいのでしょうか。

環境問題の9つの物理境界

研究では、様々なタイプの政策について、環境問題に対する影響を評価しています。サステナビリティの研究者ヨハン・ロックストロームと、地球科学者ウィル・ステッフェンに率いられた研究グループは、物理的な環境変化の境界を9つと定義しています。境界を1つ超えるごとに、突然の変化が起こる可能性があり、人類社会へ深刻な反動が引き起こされます。

人類はすでにこういった境界を3つ踏み越えています。気候の変化、生物多様性の破壊、そして、農業を通した窒素とリンの自然循環の破壊です。これらは純粋に物理的な境界であり、人の経済活動を考慮してはいません。

一方、経済学者のケイト・ラウォースは、人類が必要とする物理的、社会的なものを組み合わせて考えています。人類が持続的に経済発展するためには、この2つの間に存在する概念的なドーナツ状の隙間に経済圏を限定しなければなりません。地球とすべての人をケアするためには、根本的なレベルでの経済政策を進めなければならないのです。

9つの境界とドーナツ状経済圏

中心が社会的基盤として必要なもの。外部に9つの環境境界。その間のドーナツ状に持続可能な経済圏がある。Credit: Kate Raworth

環境問題を社会的に解決するベーシックインカム

研究者たちは、規模や新しい考えを条件に加えた上で、古くから知られた政策を人新世の問題の解決のために当てはめてみました。その中の一つが無条件のベーシックインカム(UBI)です。小規模のUBIの試験では、学業成績の向上や福祉コストの削減、新事業立ち上げの数と成功率両方で改善が見られ、幸福度も上がっています

しかし、UBIの利点はそれだけではありません。仕事と消費の間にある繋がりを取り除くことができるのです。つまり、慎重に長期に渡って行われた場合、現在の経済成長を無制限に煽っている消費活動や生産活動が緩やかになることで、環境への衝撃を著しく抑えることができるのです。仕事を抑え、消費を抑えた上で、必要なものは満たされるということが起きます。将来への不安から不必要なまでの重労働をする必要がなくなるのです。

UBIによって、極度の貧困や依存がなくなります。環境破壊を押し進めるような仕事を含む忌むべき仕事を拒否することができるようになり、もっと長期的な目で見てやりたい仕事ができるようになります。次の給料日までのことではなく、自分自身や家族、もっと広く人新世全体の生物のことを考えられるようになるのです。

野生生物

Photo on Visual hunt

他の環境政策として急進的なものは、地球の半分を野生に返すというものです。2050年までに、世界人口の3分の2が都市に住むことになるはずです。すると、主要都市以外の郊外は、どんどん野生化していくことになります。UBIが基本的必要性を満たすための選択の自由を人々に与えるのに対して、地球の野生化は、他の生物に対して同じ選択を与えることになります。

新たな時代には、新たな様式の生き方が求められます。20世紀に必要とされた政策の代わりに、もっと慎重に計画された政策によって社会を変えていく必要があるのです。拡大し続ける生産と消費のサイクルを断つことが、人新世を人類が生き延び複雑化する社会で繁栄を続けるためには必要となるでしょう。そのためにも、ユニバーサルベーシックインカムについて今一度考え、実験的な運用などからデータを集めて解析し、議論をすすめていく必要があるでしょう。

参考記事: The Conversation

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