昔の人達はどのように歯をみがいていたの?

歯ブラシ わかる!科学

今のような優れた電動歯ブラシやナイロン製歯ブラシ、デンタルフロス、殺菌作用のある歯磨き粉などの無かった時代、人々はどのように口内のケアをしていたのでしょうか?

昔も今と同じように虫歯を生み出すミュータンス菌は当然いて、人の歯は一度しか生え変わりません。歯のケアをしないと、虫歯や歯周病でどんどん歯がなくなってしまい、食べ物が食べられなくなってしまいます。

口腔の健康法には実に長い歴史があります。ワインを浸した爪楊枝や尿でのうがいといった方法で口の健康が守れると考えられた時代があったのです。

古代の人たちの歯磨き

考古学者たちが見つけた、最も古い時代の口腔ケア用品の遺物は、太古の爪楊枝や歯科用の道具、歯のケアに関する記述で、2500年以上も前のものです。有名なギリシャの医者であるヒポクラテスは、歯をきれいにすることを最初に推奨した一人であり、乾燥した歯磨き粉の使用を勧めています。

古代中国とエジプトの文書でも、歯磨きと虫歯の抜歯を健康の維持のために勧められています。こういった文化圏で行われていた歯磨きの方法は、樹皮を噛むことや、先端をほつれさせた棒、羽根、魚の骨やヤマアラシの針でのブラッシングです。また、銀や翡翠、金などの素材を使って歯を装飾したり、補修することもされていました。

アラビア半島や北アフリカ、インドでは伝統的に、サルバドル・ペルシカと呼ばれる樹木から作られたミスワクと呼ばれる天然の歯ブラシが使われています。天然の殺菌作用を持っているため口腔ケアに有効です。

ヨーロッパではボロ布に塩や炭を巻き込ませたもので歯をきれいにしています。

日本では飛鳥時代に仏教が伝わるのと同時に、歯磨きの習慣が輸入されました。歯木と呼ばれる道具を使って歯を磨いていたようです。はじめは宗教儀式のため、後に江戸時代になって一般に普及しました。

中世以降の歯磨き

信じられないかもしれませんが、1700年代にフランスの医者であるピエリ・ファウチャードは、人々にブラッシングはするなと教えていました。彼は、近代歯科の父と考えられています。ブラッシングの代わりに、爪楊枝と水やブランデーを含ませたスポンジでの掃除を勧めていたのです。

1700年代になって、イギリス人のウィリアム・アディスが歯ブラシの販売を大規模にはじめました。彼は歯ブラシのアイディアを、監獄にいたときに骨と動物の毛から歯ブラシを作ったことから得ました。

現代見られるような形の歯磨き粉が作られる前は、薬剤師たちが歯磨き用クリームや粉を調合して売っていました。初期の歯磨き粉はタルカムや粉々にした貝殻のような研磨剤をユーカリや樟脳のような殺菌作用があると考えられていたエッセンシャルオイルと混ぜて作られています。味付けとして、シナモンやクローブ、ローズやペパーミントのオイルが使われました。そして、多くはアンモニアや葉緑素、ペニシリンといった化学物質を含んでいました。これらの成分は、虫歯や口臭の原因となる酸を作り出す細菌への対策となります。

歯磨き粉

Photo credit: zoomar on VisualHunt / CC BY-NC

1900年代のアメリカでは、移民の子供は「アメリカナイズ」するために口腔衛生を教育されました。工場では労働者の歯を検査してきれいにし、歯痛で仕事を休まないようにしています。

毎日の歯磨きの習慣は第二次世界大戦によってアメリカ人には定着しました。アメリカの軍隊では兵士に日常の衛生習慣の一部として歯磨きを要求したのです。最初のナイロン製の歯ブラシが作られたのは1938年のことで、電動歯ブラシが出たのは1960年代です。

現在、多くの種類の道具や衛生用薬剤が市場に出回っており、私達の口腔衛生の役に立っています。重要なのは、どのような方法であれ、毎日口腔内をきれいに保つことです。現代の歯医者さんは、少ない歯磨き粉での磨き残しのないブラッシングと歯間フロスを勧めています。

気になる方は一度歯医者さんに、口腔ケアの方法を教えてもらうと万全ですね。磨き残しスポットがあったりすると教えてもらえますよ。大人になったら生え変わらない大事な生涯のパートナーですから、長持ちさせたいところです。

参考記事: The Conversation

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