世界からすべての蚊が消え失せたらどうなるの?

蚊 わかる!科学

夏になると飛んできて、人の血を吸ううっとうしい嫌われ者の蚊。蚊なんていなくなればいいのにと思ったことがある人も多いかと思います。しかし、その願いが実現した場合どのようなことがおこるのでしょうか。

世界中のほとんどの人が、蚊を毛嫌いしているのは確かです。個人的には、そこまで気にしていませんが、というのもいうほど刺されることもそれほど多くなく、刺されて痒くなるのも一時的なものでしかないからです。しかし、蚊に刺されて痒くなることや、夜中に蚊がたてるプーンという音に、全く我慢ならない人のほうが多いでしょう。

マラリアの研究をしている研究者は、研究のため、蚊の世話をするために時間を使っています。蚊の研究は、重要な仕事です。というのも、蚊は単にうっとうしいだけでなく、世界で一番危険な生き物だからです。他の動物でこれほど多くの人々の死因なっているものはいません。蚊は多くの死をもたらす病気を広めるのです。なので、もしこの危険な生き物が全く消え失せてくれたら、世界にとってこれほどいいことはないのではないでしょうか?

蚊について詳しく

質問に答える前に、まず、蚊とはどういう生き物なのかを理解する必要があるでしょう。実は、蚊は分類上昆虫の中での大きなグループを形成しています。ハエの仲間で、幼い蚊は幼虫と呼ばれ、成虫とは全く異なる見た目をしています。また、成虫は、四枚の羽を持つミツバチやアシナガバチとは異なり、二枚の羽しか持ちません。ハエの中には多くの種類の刺すハエがいます。それらのすべてが卵を生むために、人間を含む動物の血を必要としています。

アブやツェツェバエといった多くの種類の刺すハエはいますが、今の所、蚊が最も一般的で広く分布しています。

私達が蚊と呼んでいる動物は、実のところ3000種類の異なった種類の昆虫を指しており、その生態は様々です。多くは夜に行動しますが、日中に行動するものもいます。気づいていない人もいるかもしれませんが、人を刺すのはメスの蚊だけです。卵を生むために血を必要としているからです。オスの蚊は、植物の作る甘い蜜を吸って生き延びています。ある種のウイルスや、マラリアのような寄生性の原虫に感染した人をメスの蚊が刺して血を吸った場合、その蚊が別の人を刺すことで病気が広まります。すべての種の蚊の中で、約40種類の蚊のメスだけが、人に病気をうつすので、とても危険です

なので、世界中の蚊の中で、本当に危険なものはほんの一握りなのです。問題なのは、その僅かな種類の蚊が、マラリアのような多くの危険な病気を広めてしまうことです。毎年5億人以上の人が、主にアフリカで、そういった病気にかかっています。マラリアを引き起こす蚊だけが消えただけで、毎年50万人の主に5歳以下の子供たちが救われることになります。

もし、これらのマラリアを引き起こす蚊が消えただけで、世界はより健康な場所になるのです。

もし、蚊が消えてしまえば、私たち全てにとって、いいことのように聴こえるかもしれません。しかし、そうではありません。なぜなら蚊にも重要な働きがあるからです。

動物たちのエサ

人間を含む異なる種類の動物達が、生態系と呼ばれるものを形成しています。その中では、すべての動物が生き延びるために色んな方法で互いを必要としています。そして、蚊でさえも、生態系の中では必要とされているのです。

何十億もの蚊がいます。その膨大な数の昆虫は、他の動物のエサとなりえます。蚊だけを食べる動物というものは知られていませんが、多くの蚊がいて捕まえるのも簡単ですから、多くの動物が食べています。蚊の幼虫は水中に住んでいて、モスキートフィッシュの好物となっています。カエルやトンボ、アリ、クモ、ヤモリ、コウモリなどの動物も蚊を食べています。

多くの蚊は人を刺さず、他の動物から血をすっていて、全く刺さないタイプの蚊もいます。オスの蚊は、受粉の助けをすることで、植物の繁殖を手伝うことができ、植物が生息域を広めて、異なる場所で育つ機会を与えています。ミツバチと同じことはしませんが、ブラントリーフオーキッドのような植物にとっては極めて重要です。

色んな人が、蚊について同じ質問をしています。科学者たちも、世界からすべての蚊が消えても環境に全体的に悪い影響を与えないのではないかと考えています。しかし、小さな生態系に対して何が起こるのか、そして、蚊のいない中でうまくやっていけるのかどうか、はっきりわかっている人はいません。

もし、すべての蚊を排除した場合、もっと悪いもの、例えば他の刺す昆虫で、もっと病気を広めるものや、刺し傷が痛いものなどに置き換わるのではないかという懸念もあります。

賢い科学者たちが、人間にとって危険な蚊にどのように対処できるのかを明らかにするため、世界中で一生懸命研究していることは、良い知らせでしょう。すべての蚊を一掃できないかもしれませんが、病気を移したり広めたりする蚊から人を守る手助けはできるでしょう。

人間にとって蚊は邪魔者でしかありませんが、人に害をなすのは蚊の中のほんの一握り。生態系を考えると、蚊が全ていなくなった場合にどんな悪影響が出るか、わかりません。交配によって子孫が死ぬように遺伝子操作した雄を野に放ち、蚊を撲滅させようとした実験は失敗し、蚊を減らせなかったそうですが、もし成功していたら、周りの生態系への影響もわかったかもしれませんね。

参考記事: The Conversation

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