単細胞生物である緑藻が多細胞生物へと進化する瞬間を観察

サイエンスニュース

生物には一つの細胞だけで生きている単細胞生物と、複数の細胞が一緒になることで生きている多細胞生物があります。進化の過程では、単細胞生物から多細胞生物への変化がどこかで起こったはずで、それは大きな飛躍であったはずです。

その、単細胞生物から多細胞生物への進化の過程が、実験室で再現されたかもしれません。緑藻を捕食者と一緒に育てることで、生きるために有利な多細胞の集団へと、世代を追うことで変化するのを実験室で確認できたのです。研究はモンタナ大学とジョージア工科大学で行われ、「Scientific Report」に掲載されています。

生命の起源は、科学者にとっても未だに完全にはわかっていませんが、ダーウィンの進化論によって、新たな種がどのように分岐したのかが説明されています。広く知られている説の一つでは、どのように生命を持たない物質が自己増殖するようになり、最終的に細胞を生み出すまでに複雑化したのかを中心に論じられます。

ヒトは37兆個もの細胞からできていますが、いつ、どのように自己増殖する単体の細胞が、多細胞の組織体に進化したのかはわかっていません。

新たな研究でその進化がどのように行われたのかがわかったかもしれません。実験では、単細胞の緑藻コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)が、その捕食者である単細胞の濾過摂食動物ヨツヒメゾウリムシ(Paramecium tetraurelia)の存在下で育てられました。

Credit: Matthew D. Herron

5回の実験のうち2回で、緑藻が無性生殖で分裂して増殖し、50週間かけて750世代以内に多細胞による構造体へと進化しましたこの構造体は大きすぎるため、ゾウリムシによって捕食されることはありません。

研究者たちは、緑藻があらわにした多彩な進化形態を明らかにはしていませんが、他の種でも似たようなことが起こったと言っています。

論文では、多細胞生物の起源において、捕食者が重要な働きをしたかもしれないと言っています。このことはまた「鶏が先か?卵が先か?」の問題にも答えを出してくれます。多細胞生物が生まれるのに、多細胞生物の捕食者によるきっかけが必要であることに関しては、単細胞の濾過捕食動物がその捕食者の役割を担えるのです。

コナミドリムシの短期間での進化は、捕食者が淘汰圧になることによって促されたようです。この多細胞構造への変化が、どのような遺伝子の蓄積によって起こったのかを、今後の研究で明らかにしてほしいところです。それによって、多細胞化への進化に必要だった遺伝子が明らかになるかもしれません。

参考記事: Sky News

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