小さな単細胞生物には、旋回したり、這いまわったり泳いだりするといった複雑な動きをコントロールするために脳がないのは明らかです。
しかし、水たまりに住むユープロテス・ユーリストムスは、14本の突起物を使って昆虫が歩き回るように、歩き回る方法を脳がないにも関わらず習得しています。
その動きは、オランダ人がデザインした、動く芸術品であるストランドビーストに似ていて、一連の状態を循環させて、環境に反応して適応できる機械仕掛けの構造を持っています。
「動きに応じて一連の法則があるように見えます。それはランダムではないので、何らかの情報処理が行われているのではないかと、私たちはまず、疑問に思ったわけです。」と、カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校(UCSF)の生物物理学者ベン・ラーソンは述べています。
動物の特徴を持った単細胞生物である、この原生動物は、足のように働く14本の繊毛の束を持っていて、それは触毛と呼ばれています。それは獲物を狩るために活発に活動しているときに、泳いだり歩いたりするために使われます。
This all started in the 2016 @MBLPhys course during my PhD with @Choano_Lab. I had noticed predatory critters eating the choanoflagellates I was trying to isolate from field samples. Knowing Wallace to be an expert on crazy microorganisms, I struck up a conversation…
2/n pic.twitter.com/R4jRwOAWhQ
— Ben Larson (@BEuplotes) March 1, 2021
ラーソンと共同研究者たちは、この小さな捕食者の動きをスローモーションで研究するため、その足取りを顕微鏡下で記録しました。研究者たちは、32種類の足の動きの組み合わせを同定し、ある組み合わせが、お互いに行き来しあうことが多いことを突き止めました。
触毛は、細胞内の足場構造(細胞骨格)と同様に、チューブリン繊維でできています。これらの繊維は、他の触毛との間の支持構造としても働いています。それによって、ある種の機械的なコミュニケーションが生まれています。
「ユープロテスはこういった接続を利用して、精巧な歩行の動きを実現しています。」とUCSFの生物物理学者であるワレース・マーシャルさんは述べています。
コンピュータモデルによると、繊維の伸長や張りが、どの触毛の位置パターンがその時点で可能であるのかを、決めています。ある触毛の束はある異なる歩行の段階で、緊張をため込んでいて、この緊張が放出されると、細胞は前進して次の状態へと移行します。そのような状態間で、循環的な移り変わりが起こっています。
「ユープロテスの突起がある状態からほかの状態へと、ランダムではない様式で動くということは、このシステムがある種の原始的なコンピュータであることを意味しています。」とマーシャルさんは言います。
ユープロテスにチューブリンの同期反応を阻害する薬剤を与えると、細胞の足取りは制御されたものではなくなり、無駄に円を描くような歩行になりました。
足の動きは普通なのですが、効果的に動くことを許すような方法ではもはや調整されていないのです。突起間の機械仕掛けの結合では、細胞を前方へ進ませるための、巻き上げや開放がもはや行われなくなるのです。
なので、脳や神経によらずとも、この単細胞生物は、シグナル分子のネットワークによって制御されています。そういったシステムが、どうやって微生物の中での驚くほど複雑な行動、例えば、意思決定や学習、迷路の踏破などを達成するのかを、以前にも見てきました。
「この仕組みはそれ自身、驚くべき生物学的現象であるだけでなく、他の種類の細胞でも、もっと一般的なコンピューター的な処理といった可能性を照らしています。」とラーソンさんは述べています。
この自律的運動のシステムが働く仕組みについて、理解すべきことはまだたくさんありますが、どうやってランダムな分子過程が、順序だった行動を作り出すことができるのか、といった例のリストの一つに、歩行を加えることが今回できました。
今回の研究は、「Current Biology」で発表されています。
参考記事: Science Alert
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