よみがえる恐竜!科学者たちは恐竜の特徴を持つニワトリをすでに作っている!

ニワトリ 生物学

ジュラシックパークのように、恐竜を現代によみがえらせることは夢がありますが、化石からDNAをとってくることは難しいでしょう。しかし、恐竜の子孫である鳥を使えば、遺伝学的に恐竜を現代によみがえらせることも夢じゃないかもしれません。

先端的な実験において、研究者たちは、ニワトリの胎児をベロキラプトルや始祖鳥のような小型恐竜に似た突き出た口や口蓋を持った物へと変化させています。

研究チームは「チキンサウルス」そのものを作ろうと実験を始めたわけではないと、「Evolution」誌に論文を掲載した著者は述べています。ニューヘイブンにあるイエール大学のバート・アンジャン・ブラー氏と、アメリカはケンブリッジ、ハーバード大学のアルカト・アブザノフ氏は、もともと、鳥のクチバシがどのように進化したのかを理解したかったのです。鳥のクチバシは、鳥の解剖学上非常に重要な部位で、鳥が栄えるのに決定的な役割を果たしています。

「重要な進化における変異を調査した場合いつだって、そこに横たわる仕組みを知りたいと思うものです。」とブラー氏は言います。

ラプトル

UnsplashDaniel K Cheungが撮影した写真

初期の鳥に似た始祖鳥の化石が見つかり、鳥が恐竜から進化したという理論が出現した19世紀以来、恐竜の身体的な部位を再現する方法を見つけることは、人気のある話題であり続けています。もっと最近になって見つかったほかの化石同様、始祖鳥は翼と羽をもっていますが、恐竜との類似点も多く見つかっているのです。

しかし、この始祖の鳥は現代の鳥とは同じ見た目をしていません。特に、クチバシの代わりに、祖先である恐竜と同じような長い口を持っています。どのようにそれぞれへと変化するのかを理解するため、ブラー氏のチームはニワトリでクチバシを生み出す分子過程をいろいろ変化させてみました。

「私が知りたかったのは、クチバシが、骨格的に、機能的には何であるのかということと、通常の脊椎動物が持つ長い口から鳥特有のクチバシへといった、この大きな変化がいつ起こるのかということです。」

それを確かめる過程において、チームはベロキラプトルのような小型の羽をもつ恐竜のような突き出した口と口蓋を持ったニワトリ胚をどうにかして作ろうとしました。

チームはまず、ニワトリの胚といくつかのほかの動物、例えばマウス、アリゲーター、エミュー、亀、トカゲといった動物の胚で、遺伝子の発現の仕方に変化が見られないかを総ざらいしました。この主要なグループの動物を対象にした、全般的な調査によって、鳥類は、ほかのクチバシを持たない動物には見られない顔の発生にかかわる特異な遺伝子の一群を持つことがわかりました

この手の複数の遺伝子を抑えたところ、クチバシ構造は祖先の状態へと逆戻りし、口の天井部で口蓋の骨も同様となりました。下記の画像通りです。

鳥の先祖帰り実験

Control chicken embryo, altered chicken embryo and alligator embryo involved in the study.

この遺伝学的な操作を行う目的で、チームはクチバシを発生させていると思われるたんぱく質を分離しました。それから、阻害物質をコーティングした小さなビーズを使って、これらのたんぱく質を抑制しました。卵の中で骨格が発生し始めると、個体は、鳥の骨格でみられる、長く伸びて融合したクチバシの代わりに、短くて丸い骨を持つようになりました。

突き出た口を持ったニワトリを孵化させる計画や倫理的な承認がなかったとはいえ、それらは普通に生き延びることはできただろうと、ブラー氏は考えています。

「大がかりな変更はありませんでした。ニワトリを趣味にした人や、ブリーダーが育てるような多くの変わったニワトリに比べれば、違いはほとんどありません。ほかの部分は変わりはないのです。しかし、倫理的な側面からは、注意深く考える必要があるでしょう。」

他にも似たような実験で、チリ大学の研究者ホアン・ボトロ氏は、鳥の胚で長い腓骨を遺伝学的によみがえらせることに成功しています。ボトロ氏は鳥の腓骨、下腿の長さまで伸びた薄い骨、を使いました。現存する鳥では、この骨はくるぶしまでは伸びていませんが、先祖である恐竜では伸びていました。

腓骨

UnsplashNino Liveraniが撮影した写真

ボトロ氏のチームは、現存する鳥の胚でも、この祖先の特徴を持って発生を開始しますが、時間がたつにつれて、腓骨は大幅に短くなっていき、成鳥では、長くて空洞のある物の代わりに、小さな破片のような腓骨になります。この情報をもとに、研究者たちが行ったのは、胚の段階でのこういった骨の発生を起こしている遺伝子を抑制することです。

ここでも、研究者たちの目的は、恐竜をよみがえらせることではありません。そうではなく、今までなされなかった、分子レベルでの鳥の進化を理解したいと思っています。

チキンサウルスと呼ばれるものを実験している別の人物が、ロッキー博物館の古生物学主事で、モンタナ州立大学の教授、ジャック・ホーナー氏です。「ジュラシックパーク」の科学顧問で、小型肉食恐竜のように、歯とかぎ爪、長い尻尾を持った、遺伝学的に変異させられた家畜の鳥を作り出そうという空想家でもあります。彼の研究チームは、すべての動物の胚は胎盤内や卵の中では、より多くの尻尾の骨を持っているという事実をもとにして、胚の段階でニワトリの尻尾を伸ばそうと研究を続けています

ホーナー氏は恐竜とニワトリの合いの子を作ろうと決めていて、彼によると、それは遺伝子操作されたニワトリであるだろうということになります。彼はまた、鳥の胚で尻尾を伸ばすことは、それほど難しいことではないということは、認めていますが、成鳥が尻尾を使うことができるかというのは、また別の問題となります。空を飛ばない肉食の恐竜は、獲物をつかむための器用な指を持っていましたが、成鳥はそのような新しい特徴を使うためには、多くの筋肉と神経の再微調整が必要となるかもしれません。

このように、多くの科学者たちが鳥類の進化の謎を解き明かそうと同時進行で研究を続けていますが、まだ答えられなければならない質問があります。しっかり情報を追って遺伝学における次の大きな発展を待ちましょう。

ブラーさん自身は、15年から20年で、必要な道具や情報がそろって、小さなベロキラプトルのように走り回って、獲物を歯の生えた突き出た口で捕まえる生きて息をするダイノチキンを孵化させられるだろうと信じています。

「これは理論の話ではありません。ここで話しているのは半世紀後の話ではなく、数十年後の話です。それは起こりつつあるのです。」

参考記事:Earthly Mission

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